他人の実績を評価するプロセスは、認知心理学の最大の謎の1つである。評価プロセスは、特定の作業をこなす個人の能力について判断を下す際に断続的に起きる。電気技師からバスの運転手、会計士、政治家にいたるまであらゆる人間が評価の対象となる。
問題は、個人の実績について入手できるデータが限られているという点だ。データの中には評価に直接つながるもの(たとえば、タクシードライバーなら運行記録など)もあるが、ドライバーの性別などのように大部分は重要度が低いものだ。ときには情報量が多すぎるため、データを選別して判断をすることもあるだろう。判断はいったいどのように下されるのだろうか?
今日、イタリアのピサ大学のルカ・パッパラルド博士と共同研究者のおかげで、その回答が得られている。研究チームは実績がはっきりと表れるスポーツ界における評価の問題を研究した。人が他人の実績をどのように評価し、それが客観的な尺度とどう関連しているか、独自の視点を提供している。
スポーツの世界は、個人の詳細な実績データが数年間に渡って蓄えられている。パッパラルド博士らは世界で最も人気のあるスポーツであるサッカーに焦点を当て、特にイタリアの「セリエA」リーグで活躍するトップ選手の実績に注目した。
イタリアのスポーツ紙は長年に渡って、試合ごとに選手を0点から10点の尺度で評価している。0点は「記憶に残るほどひどい」、10点は「記憶に残るほど素晴らしい」だ。この評価システムはイタリアの学校の成績評価方法に基づいており、6点は合格ラインに達していると見なされる。スポーツ紙の評価方法は公表されていないが、専門知識を持ったスポーツ・ジャーナリストが採点しているものと見られている。
近年では客観的な評価システムも採用されるようになり、各選手のパスやシュート、相手選手が保持しているボールを奪うタックル、難しいシュートを見事に止めるファイン・セーブなどの数がカウントされている。この技術的な評価には150のパラメーターが考慮されており、各選手のピッチ上でのパフォーマンス全体が浮き彫りになる。
パッパラルド博士のチームが注目したのは、スポーツ紙の評価と技術的な評価との関連性だ。スポーツ紙のような、人間が下す評価に影響を与える要素を、技術的な評価データを使用して判別 …