KADOKAWA Technology Review
×
「騙すAI」対「見抜くAI」 激化するフェイクニュース戦争の行方
Selman Design
ニュース Insider Online限定
Can AI Win the War Against Fake News?

「騙すAI」対「見抜くAI」 激化するフェイクニュース戦争の行方

インターネットに溢れる「フェイクニュース」を検出するために人工知能(AI)技術を利用する取り組みが進められている。一方で、AI技術はより巧妙なねつ造ニュースを作成することにも利用可能であり、両者のせめぎ合いは軍拡競争の様相を呈しつつある。 by Jackie Snow2018.01.11

あれはインターネット史上におけるねつ造ニュースの最初の一コマだったのかもしれない。1984年、ユースネット(Usenet)にソビエト連邦が参加していると誰かが投稿したのだ。その投稿は無害なエイプリルフールのいたずらであり、現在のほとんど武器と化した偽情報キャンペーンや、手っ取り早く儲けるための無節操な作り話からは程遠いものだった。だが、誤解を呼ぶ、悪意で歪められたオンライン・コンテンツがあまりに多くなった今日、もはや私たちはその泥沼から自分自身の力で抜け出すことが叶わなくなった。その代わりに、機械に救ってもらわなければならなくなる可能性はますます高まっている。

「アドベリファイ(AdVerif.ai)」は、この闇に光を照らすであろうアルゴリズムだ。アドベリファイは、でっち上げ、ヌード、マルウェア、その他の問題がある記事を検知するための人工知能(AI)ソフトウェアであり、同名のスタートアップ企業が運営している。2017年11月にベータ版が発表され、米国や欧州で、偽物や感情を害する可能性のある記事を排除したいコンテンツ・プラットフォームや広告ネットワーク企業と提携している。

アドベリファイの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるオア・レヴィによると、同社は一般ユーザー向けではなく、企業向けの製品に焦点を当てることに商機を見い出したという。個々の消費者はどんどんクリックする記事のそれぞれの真実性を気にかけないかもしれないが、広告主やコンテンツ・プラットフォーム企業は悪いコンテンツを掲載したり広告したりすることで失うものがある。広告主やコンテンツ・プラットフォームがサービスを変更すれば、ねつ造ニュースを作って稼いでいる連中の収入を効果的に断ち切れるかもしれない。「アドベリファイは、この種のコンテンツとの戦いにおける大きな一歩になるでしょう」と、レヴィCEOはいう。

アドベリファイはコンテンツを読み込み、不適切だという証拠の兆候を見つけ出す。たとえば見出しが本文と合致しない、あるいは見出しに大文字が多すぎるなどだ。さらに、それぞれの記事を何千もの正当な記事や偽造記事のデータベース(毎週更新される)と照らし合わせてクロスチェックをする。システムは検討した各記事について、フェイクニュースやマルウェア、あるいはヌードなど、顧客企業が注意するように指示したさまざまなコンテンツが含まれている可能性を評価し、得点付けをした報告書を顧客に提供する。レヴィCEOは、ゆくゆくは巧みに処理した画像を見分ける能力を追加し、ブラウザーの …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る