押し寄せる自動化の波、弁護士は生き残れるのか?
知性を宿す機械

Lawyer-Bots Are Shaking Up Jobs 押し寄せる自動化の波、弁護士は生き残れるのか?

専門職であり、自動化から縁遠いと考えられていた弁護士の業務にも、人工知能(AI)が入り込もうとしている。機械学習AIを使って弁護士の業務を支援するソフトウェアが登場し、AI技術を核とするリーガルテック・スタートアップ企業も勢いに乗りつつある。 by Erin Winick2018.01.09

周到な調査、判例法についての深い研究、そして複雑な議論の構築。弁護士という仕事は何百年もの間、さほど変わらない方法で営まれてきた。だが用心した方がいい。人工知能(AI)が入り込んできているからだ。

米国には2016年時点で130万人以上の弁護士と、20万人のパラリーガル(弁護士の法律事務を補佐する人)がいる。だが、コンサルティング会社マッキンゼーは弁護士の仕事の22%と、法務書記の仕事の35%は自動化できると見積もっている。すなわち、人間が完全に取って代わられるわけではないが、遠くない未来に業務やキャリアが大きく変わる可能性があるということだ(「『AIはすでに仕事を奪っている』、元グーグルの中国トップが明言」を参照)。すでに変化が起こっているケースをいくつか紹介しよう。

「もし法科学生の親だったら、少し心配でしょうね」と話すのは、トッド・ソロモンだ。ソロモンはシカゴにある法律事務所、マックダーモット・ウィル&エメリー(McDermott Will & Emery)のパートナー弁護士(経営層の弁護士)である。「AIを考慮に入れなくてもすでに、若い弁護士が訓練を受ける機会はあまりありません。しかし、さらにAIも加わるとなると、進歩であると同時に、私たちの首を絞めることにもなるでしょう」。

今のところ、弁護士業務の自動化に最も大きなインパクトを与えているのが、AIを使った文書発見ツールだ。何百万件もの既存の記録や判例集、準備書面などを使って機械学習アルゴリズムを訓練すると、弁護士が主張を組み立てるために必要な資料に印を付けるように学習できる。その性能は、しばしば人間よりも上だ。たとえば米金融大手のJPモルガン(JPMorgan)は、社内で「コントラクト・インテリジェンス(Contract Intelligence:COIN)」と呼ばれるソフトウェアを使っていることを先だって公表した。COINは、法務担当者が年間36万時間もかかっていた契約書の審査を、数秒間で終えられるという。

こういった文書発見ツールは、リーガル・リサーチ(法律の調査・分析)の方法を変えている。法律事務所のスタッフはこれまで、ほこりにまみれた法律書や判例集が積み上げられた間をとぼとぼ歩いて、情報を集めたものだった。そういった業務は一般的にはパラリーガルの手に委ねられていた。通常は法 …

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