米国の「ネット中立性」規則廃止、何が問題か?
米国のテック業界が猛反発してきた「ネットワーク中立性」規則の廃止が12月14日、米国連邦通信委員会(FCC)で可決された。なぜテック業界が反対し、何が問題だったのか? MITテクノロジーレビューの記者が解説する。 by Martin Giles2017.12.20
12月14日に米国連邦通信委員会(FCC)はネットワーク中立性規則を廃止する計画について採決する予定だ(日本版編注:この記事のオリジナルは12月8日に公開され、FCCの採決は14日に可決された)。計画が承認されれば、インターネットが米国内で機能する方法を作り変え、まず間違いなく消費者と起業家に損害を与えることになるだろう。
FCCのネットワーク中立性規則は、コムキャスト(Comcast)やベライゾンといったインターネット・サービス事業者(ISP)が、(合法的な)コンテンツをブロックしたり速度を遅くしたりするのを防ぐものだ。この規制はまた、ISPが「有料の優先順位付け」に携わったり、自社のコンテンツを他社よりも速く配信するために、企業に支払いをさせることも禁じている。多くの議論がなされた後、この規則はオバマ政権時代のFCCが出した「オープン・インターネット命令」によって2015年に導入された。
共和党員でベライゾンの元幹部であり、トランプ大統領によりFCCの委員長に任命されたアジット・パイは、この命令を覆したがっている。そうしたパイ委員長の意図は広く報道され(「トランプ政権が FCCの規制撤廃で 通信事業者の土管化を阻止」を参照)、白熱した議論の引き金となった。パイ委員長とその支持者は、サービスをどう編成し料金を請求するか、ISPに対してより大きな自由を与えたいと思っている。反対者は、パイ委員長の計画によって、人々がオンラインで何を見るかの決定にISPが大きすぎる影響力を持つのではないかと懸念している。
オープン・インターネット命令はブロードバンドの分類を規制の少ない「情報サービス」から 「電気通信サービス」に切り替えた。この切り替えによってFCCは、より厳格で公益性を重視した規制をISPに課すことができた。パイ委員長とその支持者はブロードバンドへの投資を低下させるとして、この方法を非難した。今年初めのスピーチの中でパイ委員長は、2014年の初めから2015年の終わりにかけて米国の大手ISP企業12社による国内投資額が5.6%、36億ドルも落ち込んだと主張した。
しかし他の調査は、何年もの間、米国におけるブロードバンド投資全体はほとんど変化していないことを示している。消費者保護団体フリー・プレス(Free Press)による文書は、公開されているISPの投資額は、オープン・インターネット命令実施後の2年間で、それ以前の2年間と比べ5%増加したと …
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