量子コンピューターで生物の進化を解明、自然淘汰の特性を再現
生命の起源や進化において量子力学的な振る舞いがどのような影響を与えるかを、量子コンピューター上の人工生命シミュレーションで調べる研究の成果が発表された。人工量子生命の複製の過程に突然変異を取り入れることで、自然淘汰をかなり忠実に再現できたという。 by Emerging Technology from the arXiv2017.12.15
量子力学は生命の仕組みにおいて、どのような役割を担うのだろうか。誰にもはっきりとは分からないことだが、最近になって、物理学者たちがあらゆる可能性について調査し始めている。その過程で、量子力学が、光合成や鳥の位置感覚に対して、そしておそらく人間の嗅覚に対しても重要な役割を果たすことを示す証拠が集められている。
量子過程が生命の起源そのものや遺伝子コードの形成を規定したに違いないという推測的な考え方さえある。このような問題を解明するための研究が、生命体の分子を注意深く観察しながら現在進められている。
この問題に取り組む別の方法として、ボトムアップで洞察するアプローチがある。長い間コンピューター科学者たちは、コンピューター・コードで構築した人工生命体を用いて研究に取り組んできた。このコードはコンピューター環境の中に生息し、一定の選択基準に照らして適応度が評価される。
コードで構築された人工生命体は、他のコードと結合するか、自身のコードの突然変異によって増殖する。生存に最も適したコードがより多くの子孫を生み出す一方で、生存に最も適していないコードは次第に消えていく。言い換えれば、コードは進化するのだ。コンピューター科学者たちは、このアプローチを用いて、生命、進化、および複雑さの出現に関するさまざまな様相を研究してきた。
このアプローチは、従来の古典的物理学の手順に次々と従う完全に古典的なプロセスだ。それに対し、現実の世界には、量子力学や量子力学が引き起こす奇妙な現象が存在する。この事実により、量子力学が進化や生命の起源そのものにどのような影響を及ぼすのかという疑問が生じる。
疑問の解明には、人工的な量子の生命体を作り出し、量子の世界で進化の過程を再現することが重要な最初の一歩となる。だが、そのようなことは実現可能なのだろうか。
スペインのバスク大学のウナイ・アルバレス=ロドリゲス博士たちの研究が、その答えの一つだ。ロドリゲス博士たちの研究チームは初めて、量子版の人工生命を作り出した。量子的振る舞いを考慮した進化のシミュレーションの最初の例であり、物理学者たちはこのモデルを使って、量子の世界でどのように複雑さが出現するかを探究できるようになるという。
実験は原理的には単純だ。研究チームは、量子生命は遺伝子型と表現型の2つの部分から成り立つと考える。炭素系生命体の場合と同様に、量子生命の遺伝子型は、個体について記述する量子情報、つまり遺伝子コードを含む。遺伝子型は量子生命単位の一部であり、一つの世代から次の世代へと伝えられる。
それに対し、量子生命の表現型は、遺伝子型の発現であり、現実世界と相互作用 …
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