レンズは文明自体の発達と同じくらい長い歴史を持つ。古代のエジプト人、ギリシャ人、そしてバビロニア人は石英を磨いてレンズを作り、単純な拡大鏡として使っていた。後の17世紀に、科学者がレンズを組み合わせて、望遠鏡や顕微鏡など私たちの宇宙の見方やその中での立ち位置を変えることになる機器を発明した。
現在、レンズはフォトリソグラフィのプロセスによって再発明されている。フォトリソグラフィは、平らなガラスのシートにサブ波長のパターンを刻む技術だ。マサチューセッツ州ハーバード大学の大学院生アラン・シーたちは、従来を超える制御精度で光を散乱するようにパターンを配置する方法を示した。研究成果となる「メタレンズ」は画像作成に革命をもたらし、光学的処理を新時代に導くと話している。
レンズ製作はいつの時代も難しいビジネスだった。レンズは一般的に、溶融ガラスか二酸化ケイ素を型に流し込んで、定着させてから必要な形に削って磨いて作られる。これは時間のかかる作業で、マイクロチップ上の光を感知する部品の製造プロセスとは明確に異なっている。
そのため、これまでシリコンチップを作っていたのと同じようなプロセスでチップ上にレンズを作れれば、非常に有益だろう。レンズを他のマイクロ電子部品と同じ工場で、同時にさえ製造できる。
シーたちはこのプロセスが今、いかにして可能であるかを示した。鍵となるアイデアは、光の波長より短い小さなパターンは光を操作できるということだ。たとえば白色光は、光の波長と同じスケールの多数の平行な溝が彫られた表面で反射すると、構成要素の色に分けられる。
物理学者はいわゆる回折格子について何世紀にも渡って研究してきた。しかし、回折格子のアイデアは、フォトリソグラフィによって様々なパターンを作ったり、形や方向を変えたりすることで大きく発展する。
1960年代以来、フォトリソグラフィは、より小さいパターンをシリコンチップ上に作成してきた。1970年、この手法によってシリコンに約10マイクロメートルの形を刻むことができた。1985年まで、パターンのサイズは1マイクロメートルにま …