マラリアは多くの人の命を奪う感染症だ。毎年最大6億もの人がマラリアを患い、100万人がマラリアで死亡している。ユニセフによると、死亡者のほとんどはサブサハラアフリカ地域(サハラ砂漠よりも南の地域)に住む5歳未満の子どもだという。
マラリア感染の拡大を防ぐことは大きな目標となっており、衛生学の専門家はさまざまな方法でマラリアの蔓延を防いでいる。マラリアの蔓延防止を目的とした介入には大成功を収めている例もあるが、あまり上手くいっていない例もある。だが、成功する場合と失敗する場合の違いについては、不明なところが多い。
マラリアは、マラリア原虫に感染したハマダラカという蚊によって伝染するが、問題なのは、このハマダラカの種は蚊の種全体のごくわずかな割合を占めるにすぎないということだ。世界には合計3600種の蚊が存在するが、そのうちマラリアを媒介するハマダラカは約60種だけだ。
広大な地域で蚊の動きを追跡するのは難しく、その種を特定することはさらに容易ではない。そのため、人の介入が他の種の個体群にどのような影響を及ぼすか、理解することは困難だ。問題解決のためにマラリアの専門家は、遠隔地に容易に普及させられる、蚊の個体数をモニターする低コストのセンサーシステムの実現を心待ちにしてきた。
そのようなシステムを開発したと発表したのが、英国オックスフォード大学のユンペン・リー研究員らの研究チームだ。リー研究員らは、蚊の翅が飛行中に立てる音で蚊の種を特定できるという現象を利用しようとしている。蚊の翅の音はスマホで録音し、記録することができる。
研究チームが開発したセンサーシステムは、蚊の音を時間や場所と合わせて記録し、そのデータを中央サーバーに送信することで、蚊の種の特定を行なう「モズウェア(MozzWear)」というAndroidのスマホアプリだ。
スマホは多くの発展途上国でも広く利用されているため、少なくと …