新方式の量子コンピューターが50量子ビット超を達成
現在の主流である超伝導回路を使うのとは異なる方式の量子コンピューターを、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの2つの研究チームがそれぞれ発表した。いずれも捕捉された原子を使う方式を採用しており、現時点での用途は限定されているが、超伝導を使う方式より規模の拡大に対応しやすい可能性があるとしている。 by Will Knight2017.12.06
想像を絶する計算能力を持った量子コンピューターの出現が遂に目前に迫っている。しかし、最初の役に立つ機械はどのようなものになるのだろうか?
IBM、グーグル、マイクロソフト、インテルといった業界の大物も、リゲッティ・コンピューティング(Rigetti Computing)やクォンタム・サーキッツ(Quantum Circuits)といった数社のスタートアップも、極低温に冷却された超伝導回路を使用することで、より能力の高い量子コンピューターの実現に向けて着実に前進している。
一方で、業界ではほとんど無視されている、捕捉された原子を用いて計算を実行する方式の量子コンピューターが、新しいレベルの複雑性に拡大でき、役に立つ仕事に使えることを、2つの研究チームがそれぞれ実証した。これらのシステムはあらゆる計算を実行できる汎用量子コンピューターではないが、研究チームは、原子を利用する方式はこれまで考えられていたよりも大きな可能性を秘めているかもしれない、としている。研究は、原子を使う方式が最終的には、研究室レベルのシステムを大規模で実用的な量子コンピューターへ発展させる、より良い手段になり得ることも暗示している。
量子コンピューターにおいて超伝導の方式が成功を収めている理由の1つとして、シリコン回路の製造に使用される加工技術が過去数十年にわたって洗練されてきたことがある(「2017年版ブレークスルー・テクノロジー10:実用的な量子コンピューティング」を参照)。しかし、量子コンピューターはさまざまな方式で構築可能だ。
2017年11月29日にネイチャー誌に掲載された2本の研究論文では、マサチューセッツ州ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の合同チームと、メリーランド大学とワシントンD.C.の米国国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards)の合同チームがそれぞれ、これまでに実証されたのをはるかに超える50キュービット(量子ビット)以上の特殊な型の量子計算機を構築したことを明らかにした。どちらのチームも、量子粒子が相互作用する仕組みをモデル化するために、アナログ計算を使用する量子シミュレーターという機械を作成した。
2つのシステムは両方とも原子を使用するが、動作の仕組 …
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