90年代後半、高校でスペイン語を学んでいたとき、当時としてはハイテクだったツールを1つ持っていた。ポケットサイズのスペイン語・英語の電子辞書だ。単語入力用の小型キーボードと、翻訳を1行だけ表示する画質の粗いディスプレイが付いていた。
たまに単語を調べるくらいには使えたが、この小型の辞書は1度に1語以上の翻訳ができなかった。母語が英語ではない人と気軽に会話を続けるのに役立つようなものでは、決してなかったのだ。
だからグーグルが、「グーグル翻訳」とスマートフォン「ピクセル(Pixel)」を介してリアルタイム翻訳してくれる無線イヤホン「ピクセル・バッズ(Pixel Buds)」の発表を聞いたとき、期待が高まった(ピクセル・バッズはBluetoothイヤホンとして他のスマホにも使えるが、その際には翻訳機能は無い)。
ピクセル・バッズのアイデアはこうだ。一人がピクセル・バッズを耳に着け、もう一人がスマホを持つ。イヤホンを着けた方が指定した言語(デフォルトでは英語に設定されている)を話すと、スマホ上でグーグル翻訳によって翻訳され、大きな音声で読み上げてくれる。スマホを持った方の返答も同じように翻訳され、今度はイヤホンを通して聞こえてくる。グーグル翻訳は100以上の言語をサポートしているが、ピクセル・バッズがサポートするのは現在のところ、そのうち40だけだ。
ピクセル・バッズは、見た目はいささか間が抜けているが、159ドルだし、ちゃんと機能するなら信じられないほど役に立つツールとなるはずだ。10月に見たステージ上のデモでは、スウェーデン語と英語の翻訳のやり取りだったが、見込みがありそうに見えた。早く試してみたい、と期待感はさらに高まった。
それから話を1カ月、早送りしよう。ピクセル・バッズを手にした私は、数日かけて色々試してみた。ヒンディー語、ベトナム語、インドネシア …