信じ難いことかもしれないが、テクノロジーに関心のある人たちのなかにも、ビットコインやイーサリアムといったブロックチェーンがハイテク業界の主流に大きく影響を与えることはないのではないか、と思っている人は未だに多い。会話のなかでプライバシー関係の話題になると、こういった人たちの懸念は、2種類のうちどちらかだ。これらのシステムは、いずれ何百万人ものユーザーが使うことになるかもしれないアプリケーションとしてはあまりにも匿名性が高いというものと、あまりにも追跡可能性が高いというものだ。
だが「ゼロ知識証明」と呼ばれる暗号プロトコルの基礎となる複雑な数学が、現在多くの人が抱えているブロックチェーンのプライバシーに関する概念をどうやら覆しそうだ。そしてその過程で、数々の新しいアプリケーションが生まれる可能性もある。
ビットコインやイーサリアム、および他のほとんどのパブリック・ブロックチェーン(誰でも参加できるブロックチェーン)は、実際のところは仮名なのであって、真に匿名なのではない。ネットワーク上で取引する個人は、アドレスと呼ばれる公開表示された数字や文字列で表される(「What Bitcoin Is, and Why It Matters」を参照)。
特定の個人の本名をその個人のアドレスと結びつける者がいない限り、その人の取引は事実上、隠すことがで …