カナダ、次世代原発建設へ
商用溶融塩原子炉
プロジェクトが本格始動
1950年代から60年代にかけて米国で研究が進められながら頓挫した「溶融塩原子炉」に対する関心が高まっている。カナダの規制当局は、同国のスタートアップ企業が設計審査の初期段階を完了したことを発表した。一方で、安全性の「最も信頼できる判断基準」となる原子力審査プロセスを持つ米国は出遅れている。 by James Temple2017.11.17
カナダの規制当局は、オンタリオ州のテレストリアル・エナジー(Terrestrial Energy)が溶融塩原子力発電所の設計審査の初期段階を完了したことを発表した。テレストリアルは北米初の商用第四世代原子炉の受注競争を前に、少しだけ優位に立った格好だ。
今回完了したのは、長い規制プロセスの中では、単なる「認可前」審査の3段階のうちの最初の段階という、非常に早い段階に過ぎない。カナダ原子力安全委員会が実際に言っているのは、テレストリアルが規制要件を順守する意向を示したということだけだ。一方でカナダ原子力安全委員会は、この概念設計が現実世界で安全に動作することを証明するために、テレストリアルはさらに多くのことをしなければならないと指摘している。
テレストリアルの原子炉が稼働するのは、早くとも5年後から10年後になるだろう。しかし、業界の観測筋によれば、カナダ原子力安全委員会の同意は、より低コストで建設と運用ができ、より広い範囲の市場ニーズを満たす、より安全な次世代の原子力発電所の建設に向けた重要な一歩だという。
「これは会社設立以来の最大の目標であり、業界の目標でもあります」とテレストリアルのサイモン・アイリッシュCEO(最高経営責任者)は言う。同社は初号機の建設地点として、オンタリオ州チョークリバーのカナダ国立研究所の敷地内を選んだ。
このニュースはまた、数十年前に米国で最初に開発された溶融塩技術を推し進めている別の国でも注目されている。MITテクノロジー・レビューが以前に報じたように、中国はトリウム溶融塩炉の研究を野心的に推進しており(「安全で安価な原子力発電、米国が中国に「無償提供」」を参照)、オランダの原子力研究センターであるNRGも同様だ。
一方で、ロンドンに拠点を置くモルテックス・エナジー(Moltex Energy)や、デラウェア州のアドバンスト・リアクター・コンセプツ(Advanced Reactor Concepts)などの第4世代原子炉企業も、カナダで早期に規制当局の承認を得ることを選択している。
確かに米国でも、マサチューセッツ工科大学(MI …
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