ビットコインは量子コンピュータによる攻撃に耐えられるのか?
暗号技術を基盤とするビットコインのセキュリティは、現存する従来型コンピュータを用いた攻撃に対してはほぼ完璧と言える。しかし近い将来、強大な処理能力を持つ量子コンピュータが登場したらどうなるだろうか。シンガポール大学の研究者が、量子コンピュータによる攻撃にビットコインが耐えられるかどうかを二つの観点から調べた。 by Emerging Technology from the arXiv2017.11.14
ビットコインは世界を席巻している。分散型電子マネーであるビットコインは、誰でも使用できる安全な決済プラットフォームだ。政府の干渉を受けず、オープンなP2P(ピア・ツー・ピア)型ネットワークにより運営されている。
独立性がビットコインが高い人気を集めた理由の1つであり、ビットコインの価値は急騰している。2017年の初め、1ビットコインの価値は約1000ドルだった。それが2017年11月までに約7000ドルにまで跳ね上がった。実際、この暗号通貨の市場価値の合計は約1500億ドルある。
ビットコインで最も重要な特徴がセキュリティだ。ビットコインには、盗難防止や偽造防止のための2種類の重要なセキュリティ機能がある。2つとも解読が難しい暗号プロトコルを基盤としている。言い換えると、一方向から解くのは簡単だが逆方向からは難しいという、因数分解のような数学関数を利用している。少なくとも、古典的な通常のコンピューターにおいては解読が難しい、ということだ。
ここで、問題が浮上する。量子コンピューターならこういった暗号を簡単に解読できる可能性がある。そして量子コンピューターの第一号は現在開発中なのだ。
もはや事態は急を要している。数年後には実現するであろう量子コンピューターによる攻撃に対して、ビットコインはどのくらい安全なのだろうか。
このほど、シンガポール国立大学のディヴィシュ・アガウェル助教授と数名の同僚のおかげで答えは出た。アガウェル助教授らによると、量子コンピューターによるビットコインへの脅威を調べたところ、危機は現実的で、しかも差し迫ったものであるという。
まずはビットコインについておさらいしておこう。ビットコインの取引記録は分散型台帳に保管される。この台帳は一定期間(通常は約10分間)に実行されたすべての取引を照合する。取引記録のまとまりは「ブロック」と呼ばれ、一つ前のブロックのハッシュ値が含まれている。一つ前のブロックには、そのもう一つ前のブロックのハッシュ値が含まれていて、これがチェーンのように繋がっていく。ブロックチェーンという呼び名の由来だ(ハッシュは、様々な長さのデータを一定の長さのデータにする数学関数である)。
新しいブロックには「ナンス(number used once、一度だけ使用される数字の略)」と呼ばれる特別な属性を持った数値も含まれていなければならない。ブロックの内容とナンスをハッシュした (数学的に組み合わせた)結果として得られる値は、一定のターゲット値よりも小さくなければならない(ターゲットは採掘の難易度を表す数値で小さいほど難易度が高い)。
ナンスとブロックの内容(こちら …
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