大企業と戦うAI弁護士、次の目標は「離婚の自動化」
これまで、企業から被害を受けた人が訴訟を起こしても、時間がかかるだけでメリットがなかった。しかし、誰でも簡単に訴訟が起こせるAIの弁護士の登場で、企業と戦って損害を取り戻せる可能性が増えるだろう。 by Erin Winick2017.11.13
ジョシュア・ブラウダーは以前に、いわゆるAI弁護士として働くチャットボットを開発した。このボットは、駐車違反で切られた切符に異議を唱えることを助けてくれた。これがうまく機能しとても好評だったので、ブラウダーはプログラムを拡張して信用調査会社エキファックス(Equifax)の情報漏洩で被害を受けた人の少額裁判を支援できるようにした。現在、ブラウダーの会社ドゥノットペイ(DoNotPay)はもっと上を目指している。今年末までに、ブラウダーはこのプラットフォームを使って誰でもが訴訟を起こせる機能を追加しようと計画している。
2017年版35歳未満のイノベーター35人の1人であるブラウダーは、「正直、エキファックス被害者への支援は、誰もが誰かに訴訟を起こせる製品のテストに過ぎませんでした」と、MITテクノロジーレビューが開催したEmTechで語った。「本当の目的は、普通の人が企業を相手にする戦いの支援です」。
ブラウダーは、企業の不正行為で損害を被った人が訴訟の手続きに何年も費やすことがないように、ドゥノットペイのプラットフォームから少額裁判所に提出できる書類を印刷できるようにしたいと思っている。
ブラウダーは「企業はとにかく示談にして欲しいと言うでしょう。これで終わらせるなら、当社はあなたに1000ドルを支払いますと」と語る。「素晴らしいじゃないですか。間違ったことに対して、実際に罰を与えることができるのですから」。
エキファックスへの訴訟テストに加えて、ブラウダーはこのソフトを個人の訴訟、例えば家主とのもめ事のようなことに関してもテストしてきた。次の計画はというと、離婚の手続きを自動化することだ。
ブラウダーの最大の心配は、このように簡単に訴訟ができてしまうシステムが好評になり、誰でもが利用するようになった場合、訴訟の嵐が吹き荒れて法制度に影響を与えてしまわないかということだ。誤った訴訟に関しては、プログラムが自動的に除外する仕組みが必要だと考えている。
「人々が正当な訴えをしているかどうかを、正しく検証することが重要です」とブラウダーは語る。「時間つぶしに使われたくはありません。その訴えには、はっきりとした理由が必要なのです」。
ドゥノットペイのプラットフォームは、繰り返し使えば使いやすくなる。駐車違反に異議を唱えるために入力した名前と住所は、次に大企業を相手に訴訟を起こす時のために記録される。
ブラウダーは「これまで、法制度は力を持ったものが利用していました。しかし、普通の人が企業を相手に戦うためにも同じように利用できるのです」と語る。
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- エリン・ウィニック [Erin Winick]米国版 准編集者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。機械工学のバックグラウンドがあり、宇宙探査を実現するテクノロジー、特に宇宙基盤の製造技術に関心があります。宇宙への新しい入り口となる米国版ニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」も発行しています。以前はMITテクノロジーレビューで「仕事の未来(The Future of Work)」を担当する准編集者でした。それ以前はフリーランスのサイエンス・ライターとして働き、3Dプリント企業であるSci Chicを起業しました。英エコノミスト誌でのインターン経験もあります。