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「時間切れ」の月面探査コンテストが育んだ、宇宙ビジネスへの夢
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Why getting back to the moon is so damn hard

「時間切れ」の月面探査コンテストが育んだ、宇宙ビジネスへの夢

民間企業を対象にした優勝賞金2000万ドルの月面探査コンテストは、再三の期限延期にもかかわらず、誰も目標を達成できないまま幕を閉じた。しかし、同コンテストをきっかけに、アイスペースをはじめとする宇宙関連スタートアップに関心や資金が集まっており、本当の成果はこれから現れるはずだ。 by Erin Winick2018.05.08

本来なら今ごろは、民間の月面探査車が月でゴルフをしているはずだった。だが、月は静かなまま、グーグル・ルナ・エックス・プライズ(GLXP:Google Lunar X Prize)のコンテストは2018年3月末にひっそりと幕を閉じた。

10年以上前、グーグルとXプライズ財団は、民間初の月面探査ミッション(内容は下記)の達成を競うコンテストに賞金2000万ドルを用意した。期限はコンテスト開始当初の2012年から数回の延期を経て、 2018年1月にコンテストの終了が公式に宣言された。最終期限の2018年3月31日までに、コンテスト参加者の誰も月面にたどり着けないことが明らかになったからだ。

このコンテストでは、次の3つのミッションをクリアした民間チームに賞金と栄誉を与えるとした。

 

コンテストが始まった2007年9月13日以来、月面まで到達した宇宙船は3機だけであり、いずれも政府の資金によるものだ。3機のうち、2013年に中国が打ち上げた嫦娥(じょうが)3号だけは月面走行にも成功している。

1969年、人類は月面着陸に成功した。したがって、月面着陸が達成可能なのはわかっている。現在の先進技術を用いても49年前の成功を簡単に繰り返せないのはなぜだろう。

要するにリソースだ。米国が最初に月面に着陸したとき、米国航空宇宙局(NASA)は最短ルートをとった。最優先の目標はロシア(旧ソビエト連邦)に勝つことであり、未来の月旅行のための明確な道筋を作ることではなかった。「月への継続的な着陸や活動のための持続可能なモデルを構築する論理的な段階を踏むよりはむしろ、一足飛びに月面に着陸したのです」と言うのは、ルナ・ステーション・コーポレーション(LSC:Lunar Station Corporation)のブレア・デウィットCEO(最高経営責任者)だ。同社はマサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とする、月のデータ解析を生業とするスタートアップ企業である。「この異常な市場構造が、機材や資材、人材を月面へ継続的に運搬するのに必要なサプライチェーンを構築するアプローチを排除してしまったのです」。

現在は冷戦の緊迫感という後押しなしで、同様の構造を再構築しなければならない。月に行く動機は、探査意欲から起こるべきであり、勝つためではない。

宇宙へ飛び立つコストが減少しているとはいえ、月面に到達するには多額の資金が必要だ。アポロ計画で使用したサターンV型ロケットには、現在の通貨価値で約11億6000万ドルが投じられた(ロケットエンジンに資金を投じるほど、おカネを燃やすのに適したことはない)。サターンV型ロケットと同等以上のパワーを持つロケット開発に、以前と同額以上の資金を早急に投じるように政府を説得するのは難しい。

現段階ではサターンV型ロケットの推力に匹敵するロケットは存在せず、積荷の多い月旅行は困難な状況である。最近、スペースXの大型ロケット「ファルコン・ヘビー(Falcon Heavy)」の試験飛行が成功し、将来的に9000万ドルという極めて低コストで月旅行ができることが有望視されている。だが、ファルコン・ヘビーですらサターンV型ロケットの推力(3400トン)の3分の2しかない。スペースXの創業者であるイーロン・マスクは以前、2018年には旅行者を乗せた月への有人飛行を実施する予定だと宣言していたが、どうやら延期されたらしい。NASAは、サターンV型ロケットの推力を上回る大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の開発を依然として進めている。完成した暁には数十億ドル規模の開発費をかけた極めて高価なロケットになるが、試験発射はどんなに早くても数年先となりそうだ。

さまざまなことが進んではい …

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