自然な会話でうつ病を治療、チャットボットのカウンセラー
チャットボットは何の役に立たないとの声は多い。だが、人工知能(AI)の著名研究者であるアンドリュー・ングが支援するチャットボットは、認知行動療法と進化した自然言語処理を組み合わせて、軽度のうつ病の治療に役立つという。 by Will Knight2017.11.01
これを認めるのは少し気恥ずかしいのだが、私はバーチャル・セラピストのカウンセリングを受けている。
フェイスブックで利用できるウェボット(Woebot)という名のチャットボットは、対話型の認知行動療法を実践するスタンフォード大学の研究者らによって開発された。これまでグーグルやバイドゥで最先端の人工知能(AI)テクノロジーの開発と応用を率いてきたアンドリュー・ング非常勤教授がサービス提供企業に取締役として加わり、プロジェクトを支援している。
「社会的な需要から言って、またAIの能力面から言っても、デジタル手法によるメンタルヘルスケアはあらゆる要件を満たしていると思います」とング非常勤教授は語る。「人間のセラピストの洞察力と共感力をチャットボットにほんの少し取り込んで大規模に活用できれば、何百万もの人々を助けることができるかもしれません」。
私はこの数日間、試しにウェボットから、思考過程を理解・制御して抑うつと不安感に対処するための助言を受けている。自分がうつ病だとは思っていないが、実際に体験した私の印象はポジティブだ。大概のチャットボットに対してはかなりの苛立ちを感じることを考慮すれば、特に目覚ましい結果といえる。
臨床心理学者でもあるウェボットのアリソン・ダーシー最高経営責任者(CEO)は、2016年7月頃、スタンフォード大学で教鞭をとる中でウェボットのアイデアを思いついた。「今、社会の中で最も支援が行き届いていないのは若年層です。心理療法を受けるのは恥と見なされていますし、費用も高額です」。
ダーシーCEOはスタンフォード大学でング非常勤教授と出会った。その時、深層学習などの手法を対話型エージェントに応用する研究に刺激を受け、ボットによるセラピーが可能かもしれないとの発想が生まれたという。ダーシーCEOによれば、認知行動療法は自動化することができる。なぜなら治療には一連の手順があり、段階を踏んで症状改善の妨げになっている思考様式の特定・対処が行なわれるからだ。また、近年の自然言語処理の進歩が、特定 …
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