マサチューセッツ工科大学(MIT)のイェット‐ミン・チェン教授が、最新のエネルギー貯蔵技術に賭けた。再生可能エネルギーと化石燃料の直接競争を前提に設計されたフロー電池のスタートアップ企業を立ち上げたのだ(「24M’s Batteries Could Better Harness Wind and Solar Power」参照)。
チェン教授らが新会社で挑む目標の高さは、「ベースロード・リニューアブル(Baseload Renewables)」という社名から容易に想像できる。マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くベースロードが目指すのは、再生可能エネルギー源から送電網へ24時間連続して安定的な電力供給ができる電池。それもリチウムイオン電池と比べて少なくとも5分の1のコストで生産できる電池の開発を目指している。
実現すれば、夏の間に太陽光発電で余剰電力を作り出して保管しておき、曇り空が続く冬でも地域の需要を間断なく満たす、「周期的な貯蔵」という考え方が現実に近くはずだ、とチェン教授はいう。
最近、ベースロードは、MIT発の新しいベンチャー・キャピタルであるジ・エンジン(The Engine)から約200万ドルの資金提供を受けた(「MIT発ベンチャー・キャピタルが手ごわい技術に投資する理由」参照)。
ベースロードは現段階では技術的な詳細をあまり公表していないが、低コストを実現する鍵は硫黄にあるという。石油とガスの生産過程で生まれる廃棄物である硫黄は非常に豊富にあり、エネルギー密度が高く、1キログラムあたりわずか10セントという低価格で手に入る。
リチウムイオン電池のスタートアップ企業であるA123・システムズ(A123 Systems)、24Mほか3社を共同設立した経験を持つ物質科学者のチェン教授は、「1ドルあたりの蓄電量から考えると、硫黄は次善の物質よりも10倍以上も優れています」という。
ベースロードの他の共同設立者には、アクイオン・エナジー(Aquion Energy)で副社長を務めたテッド・ウィリーや、24Mでチェン教授と一緒に働いたマルコ・フェラーラ、ビリー・ウッドフォードらがいる(「蓄電池ベンチャーが 成功できないこれだけの理由」参照)。
再生可能エネルギー源がエネルギー需要のより大きな部分を占め、温室効果ガス排出量を大幅に削減するためには、より良く、より安価で、より長持ちするエネルギー貯蔵 …