カジュアル化する遺伝子検査
どこまで規制されるべきか?
日本でも広告をよく見かけるようになった直販型の遺伝子検査を巡って、米国で議論が起きている。9月にはフットボールの試合会場で無料のDNA鑑定をばら撒こうとした企業に、メリーランド州から待ったがかかった。規制当局の判断が揺れるなか、線引きが難しくなっている。 by Emily Mullin2017.10.11
9月初旬、M&Tバンク・スタジアムに集まった5万5000人以上のフットボールファンは、ボルチモア・レイブンズの試合を観戦し、プレゼントをもらえるはずだった。彼らはTシャツやビール缶のクージー(保冷温効果をもつ缶ホルダー)といったプレゼントを想像していたが、実際に用意されていたのはボストンを拠点とするスタートアップ企業オリジン(Orig3n)のDNA鑑定を無料で受けられる権利だった。
オリジンの計画では、健康や体力に関係する4つの遺伝変異の鑑定を無料で提供するはずだったが、メリーランド州政府がDNA鑑定の宣伝に疑義を呈したことにより、イベントは延期された。
オリジンは、肌や運動能力、食事、知能、そして遺伝的体質に基づくその他の特性といった個別化された健康情報を提供するスタートアップ企業の1つである。消費者直販型の遺伝子検査であるオリジンのDNA鑑定は、ネット上での簡単な申し込み、それもわずか200ドル以下の費用で依頼ができる。顧客はガラス瓶につばを吐き出すか、頰の裏側を綿棒でこするかして採取した唾液をオリジンに郵送するだけでよく、医者に処方箋を書いてもらう必要はない。しかし、メリーランドとニューヨークの2つの州は、このようなDNA鑑定に反対しているのだ。
メリーランドの州法では、臨床検査を発注することが許可されているのは、いくつかの例外を除けば医師もしくはその他の認可を受けた医療従事者のみだ。米国食品医薬局(FDA)に「処方箋不要」だとして承認された検査であれば消費者が直接購入できるものの、オリジンはこの承認を受けていない。
メリーランド州はまた、臨床検査を消費者に直接販売することも許可しておらず、販売できるのは医師、病院、研究所に対してのみである。
オリジンは声明の中で、DNA鑑定をプレゼントするイベントは,アメフトのシーズン後半にスケジュールを組み直して実施する予定であり、現在、「メリーランド州政府の疑問に対処しているところ」だとしている。オリジンはイベントに関す …
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