インターネット投票:民主主義型選挙の基本原則である「秘密投票」は技術的に不可能
コネクティビティ

Internet Voting Leaves Out a Cornerstone of Democracy: The Secret Ballot 民主主義を破壊したい?
インターネット投票でどうぞ

インターネット経由で回収した投票用紙の機密性は「技術的に絶対に守られない」とするレポートが発表された。 by Mike Orcutt2016.08.18

もしハッカーによる選挙への干渉があってもインターネット投票に価値があるというなら、もうひとつの理由を提供しよう。「投票の秘匿」が守られないことだ。

選挙の透明性と正確性を提唱するNPOベリファイド・ボーティングが新たなレポートでそう主張した。

民主主義の基礎である無記名投票は、強制的な投票の予防策だ。しかし「現行のテクノロジー課題と、公職選挙運営特有の課題のため、インターネット投票では、有権者の個人識別と投票内容の分離は守れない、とレポートは結論付けた。レポートの共同執筆者は電子個人情報センターと、反汚職を提唱する団体コモンコーズだ。

米国の32州とコロンビア特別区(首都ワシントンないの連邦直轄地区)は、有権者にメール、インターネット接続のファクス機、またはWebポータルでの投票を認めている。ほとんどの場合、インターネット投票は海外居住者または軍所属の有権者に限定されているが、ユタ州は障害者にも認めている。ただし、アラスカ州は、すべての有権者がWebポータルで投票できる。

インターネット経由で集票すると、有権者の個人特定と投票内容は技術的に切り離しにくい、とベリファイド・ボーティングのパメラ・スミス代表はいう。サーバーが有権者を認証し投票を記録するために個人を特定しなければならないからだ。インターネット投票を認める州が現在利用しているシステムにそもそも問題がある。「通常、認証と投票の過程は同時だ」とスミス代表はいう。以前の実験では、試験的に有権者にPINコードが与えたが、研究者とともに実験に参加したハッカーはPINコードを探り出し、有権者と紐づけられたと、スミス代表はいう。

木曜日に発表されたレポートによれば、有権者がインターネットで投票する場合に、投票の秘匿性を放棄するよう求める法律や規制が20州にある。このような法律や規制はない8州でも、国務長官または選挙管理当局が同様のことを有権者に求めている。ワシントン州、アイダホ州、ノースダコタ州、ミシシッピ州は、有権者に対し、インターネットでの投票が秘匿性の放棄を意味するとは警告していない。モンタナ州は、たとえ技術的に難しいとしても、法律によりインターネットによる有権者の投票が秘匿性を保持するよう求めている。

スミス代表は、投票の過程でインターネットを利用するトレンドが、無記名投票を「浸食」しかねないという。「ほとんどすべての州は投票の秘匿性を求めている」が、インターネット投票の導入州ではその要求の対象外となる「特別な領域を作り出す」必要があった。

アラスカ州は有権者に、インターネット投票する場合、秘匿性を守る権利を放棄することだけでなく、「誤ったデータ転送が起こるリスクがあること」を有権者に伝える取り組みまでしている。投票所に歩いて行き、そのような警告を目にすることを想像してみて欲しいと、スミス代表はいう。「そんな投票システムがどうしますか?間違っていますよ」