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ジェルや飲み薬も登場、CRISPRを体内に届ける5つの方法
FreeImages.com | Kerem Yucel
Five Ways to Get CRISPR into the Body

ジェルや飲み薬も登場、CRISPRを体内に届ける5つの方法

CRISPR遺伝子療法は今後、様々な病気の治療に適用される可能性がある。CRIPSRで改変したDNAを体内の適切な場所に送達させるために、科学者たちは子宮頚部に塗るジェルや錠剤など様々な方法を研究している。 by Emily Mullin2017.10.05

遺伝子編集ツールのクリスパー(CRISPR)はあらゆる病気を治療し、おそらく治癒できる可能性を秘めている。しかし、クリスパー療法が効果を発揮するには、改変した遺伝子が体内の適切な場所に辿り着かなければならない。

研究者はクリスパーを安全かつ効果的に利用するために、驚くような送達手法を開発している。いくつかを紹介しよう。

1. ジェルとクリーム

クリスパーを人間に使う最初の試みとして、最も一般的な性感染症であるヒトパピローマウイルス(HPV)の治療のために中国で計画されている臨床試験がある。ほとんどの感染症は何の症状も起こさずに自然に死滅するが、生き残ったHPVは子宮頸がんなどのがんの原因となる。HPVを予防するワクチンは存在するが、ウイルスにすでに感染している人に対する治療法は存在しない。そこで中国の研究者は、クリスパー機構を組み込んだDNAを含むジェルを開発している。臨床試験にはHPVに感染している女性が参加し、参加者は4週間にわたってジェルによる治療を週2回受ける予定だ。ジェルは子宮頸部に直接塗られる。

2. 飲める、もしくは食べられるクリスパー

抗生物質に対する細菌の抵抗力は、米国や世界中で非常に高まってきており、いくつかの細菌感染症は命に関わるものになりつつある。従来の抗生物質の代わりとして、クリスパーの錠剤や飲み薬が、そういった細菌と戦う新しい手段のひとつになるかもしれない。

ウィスコンシン大学マディソン校のジャン=ピーター・バン・ピケレン准教授は、エリゴ・バイオサイエンス(Eligo Bioscience)やローカス・バイオサイエンス(Locus Bioscience)といったスタートアップ企業と共に、有害な細菌に自らのDNAを切断して死に至らしめるように仕向けるクリスパー療法を開発している。クリスパーの機構は、錠剤や飲み薬として摂取できる「善玉」菌やプロバイオティクスに付加する。有害な細菌と善玉菌の両方を殺してしまう抗生物質と違い、飲んだり食べたりできるクリスパーのプロバイオティクスは患者個人の細菌感染に特化して、有害な細菌だけを殺すようになっている。

3. 耳の中に注入

ハーバード大学に所属する耳の専門家であるジェンイー・チェン准教授は、クリスパーを使って、聴力が徐々に消失していく遺伝性疾患を防ぐことに興味を持っている。人間が音を聴く際には、内耳にある繊細な有毛細胞が音の振動を拾い上げて脳に伝えている。これらの細胞は、あまりにも大きな騒音にさらされた場合や、DNAに欠陥があった場合に損傷を受ける可能性がある。チェン准教授がCRISPRを使って治療したいと思っているのは後者のほうだ。TCM1と呼ばれる遺伝子を無効にするクリスパーの切断タンパク質を、DNA欠陥を持つマウスの耳に直接注入したところ、そのマウスは月齢2カ月でも聴力を維持していた。チェン博士はこの療法を次に豚で試したいと考えている。

4. 皮膚移植

クリスパーの皮膚パッチは、注射針を使わずに2型糖尿病を管理する方法になるかもしれない。シカゴ大学の研究者は、インスリンの分泌に必要なホルモンを作る遺伝子をクリスパーを使って操作した。

インスリンを分泌させるホルモンの一つであるGLP-1は、余分なブドウ糖を血中から取り除き、血糖値を調節する。科学者たちは、GLP-1を必要なだけもっと生成し、血中をより長く循環するように遺伝子を改変。その遺伝子を皮膚細胞に入れて、研究所で培養し、健康なマウスに移植した。マウスたちには高脂肪食が与えられており、皮膚移植を受けていないマウスのグループも別に用意する。

クリスパーによって改変した遺伝子を持つ皮膚の移植を受けたマウスは、そうでないグループのマウスよりも体重の増加が少なかった。また、皮膚移植を受けたマウスは2型糖尿病の前兆であるインスリン抵抗性を示すことも少なかった。シカゴ大学のシャオヤン・ウー准教授によれば、皮膚移植は他の病気にも使える可能性があるという。糖尿病患者にとっては、インスリン注射を毎日する必要がなくなることが最大の朗報だろうとウー准教授は語る。

5. 「生体外」治療

多くのCRISPR療法では、患者の細胞を体外、もしくは「生体外」で改変する必要があり、改変した細胞を再び体内に戻す。いくつかの病気で科学者は、骨髄細胞のような細胞や組織を選んで遺伝子を改変したいと考えている。生体外遺伝子療法を使えば、研究者は特定の細胞を取り出し、それらにクリスパーを適用して、研究室で培養できる。さらに、改変された細胞を体内に戻す前に、実際に機能するかどうかを確認できる。この手法は、従来型のいくつかの遺伝子療法の臨床試験で研究されてきたもので、遺伝子操作したウイルスを使って遺伝物質を体内に届ける。研究者は、鎌状赤血球症の治療にこの手法を使えるかもしれないと考えている。

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エミリー マリン [Emily Mullin]米国版
ピッツバーグを拠点にバイオテクノロジー関連を取材するフリーランス・ジャーナリスト。2018年までMITテクノロジーレビューの医学生物学担当編集者を務めた。
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