胎児の異常を血液検査で発見
髪の毛の色まで出産前に判明
母親の血液検査で胎児の遺伝子異常を発見できる手法が、確立一歩手前だ。 by Bonnie Rochman2016.08.18
レッド・ツェッペリンが最初のアルバムをリリースした1969年、カリフォルニア州の医師は妊婦の血液から採取した細胞にY染色体を発見した。Y染色は男性にしかないため、胎児が男子だとすれば、採取した細胞は胎児に由来する。
胎児の細胞が母体の血液中を循環しているのであれば、細胞を採取・分析することで胎児の先天異常を診断できる可能性があることになる。しかし、50年近く経っても実現しておらず、可能性に賭けたほとんどの科学者は諦めてしまった。結局、妊婦の血液中に胎児由来の細胞はかなり微量にしか存在しない。約30mlの血液に10個の胎児の細胞があるかないかで、しかも見つけにくい。
諦めなかった1人が、ベイラー医学大学の分子・人間遺伝子学部のアート・ボーデ教授だ。幅広い評価を得ている内科医・研究者であるボーデ教授は、自身の研究室が母親の血液から胎児の細胞を分離して検査できることを示す予備的な証拠を掴んでいるという。「この検査方法が果たして実現可能かどうかの疑念は非常に大きいものです」と認めるボーデ教授の推測によると、胎児の細胞による出生前検査を開発しようとしたバイオテクノロジー企業のうち、これまで10社以上が断念して撤退した。
「この検査の開発は、長く辛い道のりです」
胎児の細胞による検査が出生前医療を大きく変える可能性があるのは、そもそも胎児の細胞1つにも、胎児の遺伝子情報の完全なコピーが含まれるからだ。科学者が確実に、どの母親の血液からも胎児の細胞を見つけられるのであれば、かつてないほど貴重なデータになり、出生前に胎児の深刻な遺伝的問題を特定する貴重な方法の発見になる。最終的に検査が広く採用されれば、すべての胎児の遺伝子情報を完全に明らかにできる。
現在、多くの妊婦は、血液中に遊離した胎児のDNAをスキャンする「NIPT検査(非侵襲的胎検査)」を選んでいる。余分な染色体が引き起こすダウン症候群を簡単に安価に検査できる方法として、商業的にも成功している。しかし、ボーデ教授によれば、NIPT検査は他の先天的異常を見逃してしまうことがある。NIPT検査では小さな先天異常は見つけられないのに、以前からある羊水穿刺(胎児検査の至適基準で、妊婦の腹部に長い針を挿入して検査用の細胞を採取する)の出生前診断を受ける女性の数が減ってしまうからだ。
ボーデ教授は「一定数の家族に、非常に深刻な障害を持った子どもが生まれていること」が自らの動機だという。検査では、まず染色体内で …
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