
遺伝子療法1回50万ドルは高い?生涯医療費と比較してみた
人の人生を完全に変えたり、命を救ったりできる医療や医薬品に金銭的価値を付けるのは難しい。最新の治療法である遺伝子療法にかかる高いコストはしばしば議論の対象になるが、既存の治療法にかかるコストと比較することで、妥当性をある程度推し量れるだろう。 by Emily Mullin2017.09.26
米国食品医薬局(FDA)は最近、米国で「初の遺伝子療法」と呼ばれている治療法を認可した。ノバルティスが開発した「キムリア(Kymriah)」という名称の治療法は、患者自身の免疫細胞を取り出し、体外で遺伝子操作したうえで患者の体内に戻すことによって、致死性の小児白血病を治療する。キムリアには驚くほどの効果があり、一部の患者ではがんの完全寛解という成果が出ている。
遺伝子療法の背景にあるのは、「生きている医薬品」として遺伝物質を使って、病気を治療するというアイデアだ。科学者たちは遺伝子療法の開発に何十年も挑戦しており、キムリアの認可は歴史的な出来事であった。しかし、47万5000ドルという価格は、すぐさま患者の支援団体から警告や批判を受けることになった。開発中の遺伝子療法は他にもあり、それらも同様に数十万ドルの費用がかかる可能性がある。こうした値段の高さに驚く人がいる一方で、格安だと見る人もいる。
多くの遺伝子療法が1回きりの注射で完全な治癒が見込めるのは、医薬品とはアプローチが根本的に異なるからである。保険会社が遺伝子療法に保険金を支払うべきか、どれくらい支払うべきかは、これから多くの遺伝子療法が市場に出るにつれて米国の医療制度が取り組まねばならない大きな問題となるだろう。保険会社は、キムリアを支払いの範囲に含める予定かどうかについてまだ口を閉ざしている。
業界団体の再生医療アライアンス(Alliance for Regenerative Medicine)によれば、がん、遺伝性疾患、感染症向けの計504の遺伝子療法が現在臨床試験中であり、そのうち34が試験の最も進んだ段階にあるという。現在受けられる治療法よりも実質的に優れたものになりそうな遺伝子療法もある。いくつかの深刻な病状の治療にかかる個人の生涯医療費、もしくは数年間の医療費はすぐに計算できる。ざっと見ていこう。
鎌状赤血球症:信じがたいほどの苦痛を伴う血液疾患である鎌状赤血球症の患者は、病院の救急処置室でしばしば絶命し、米国の医療制度にも多額の負担がかかっている。アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology)誌の2009年の研究は、フロリダ州のメディケイド・プログラム( …
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