アウディが一部の新車で信号機と通信できる新機能を導入すること発表した。ドライバーにとって革新的な機能で、役に立ちそうだ。ドライバーは信号機の赤が青になるまでタイマーがカウントダウンする様子を見たり、接近しつつある青信号がもうすぐ変わったりすることをドライバーに警告し、ブレーキをかけ始めるようにアドバイスもできる。
とはいえ、単なる新機能以上の可能性を秘めている。いつかやってくると「信号機の死」だ。アウディの動きは、信号機が今後急速に衰退することの最初の兆候だ。
信号機はいわば不完全な世界での不完全な解決策だ。人間のドライバーは赤信号で待ち続けないといけないし、アイドリング中のエンジンからは無駄な排ガスが生じる。交差する道路の車線が青信号になり、次いで、別の車線が左折信号になり、その後にようやく前進できる。これでは交通渋滞を悪化させる仕組みのようなものだ。スマホが普及してしまい、信号が青に変わったとき、前の車が実際に前に進むかどうかの保証もなくなった。
研究者が長年夢見てきたのは、道路の効率化を妨げる犯罪的装置が消え去る日だ。今年初め、マサチューセッツ工科大学(MIT)とチューリッヒ工科大学の共同チームは、飛行機の発着陸管理と同じく、信号機を「スロットベース」のシステムに置きかえることを提案した。
共同チームの想定では、自律自動車の内蔵コンピューターは、接近した交差点交差点の交通を管理するスケジュールコンピューターと交信する。自動車は自分の進路(たとえば左折)を伝える。スケジュールコンピューターは、自動車が交差点を安全に通過できる時間帯(スロット)を割り当てる。その後、自動的に加速または減速して、予定時刻に交差点に進入する。共同チームによると、この手法を使えばよくある2本の道路の交差点の交通量を2倍にでき、自動車は交差点の渋滞に巻き込まれずに通過できるようになる。
このアイデアは2009年に発表された手法と似ている。テキサス大学オースティン校の自動車オタクが思いついたアイデアは、「予約」システムでは、自動車は予約を入れることで、交差点を速やかに通過できる。
どちらの実験も興味深い。初の完全自律自動車が路上を走るまでそう長くはかからないにしても、道路が運転上手なロボットドライバーだけになるまでには長い時間がかかる。
その意味で、オースティン校の研究チームが昨年来計画中の予約システムの修正版は興味深い。路上を走る車両をすべて自律自動車とは想定せず、自動運転なし、運転支援型、半自律型、完全自律型が混在する状態でも利用できることを想定している。シミュレーションでは、たとえば半自律型車両のドライバーは、ボタンを押して交差点の空いている車線の予約を入れる。このとき、近くを走っている半自律型または完全自律型車両も交差点を同じ方向に通過するときは、グループになって交差点を通過する。交差点が埋まっているとき、予約は拒否され、ドライバーは信号にしたがって交差点を通過するように通知される。
アウディのシステムはこの域までは達していないが、車両と交通網の通信を商業展開したことの意味は重大だ。アウディの発表によると、通信機能はSUVのQ7とミドルセダンのA4に組み込まれる計画で、信号機能は米国の5~7都市で利用できる予定だ。
車車間通信(Vehicle to Vehicle)同様、自律運転車同士で交信することで交差点の状況は円滑になるし、車路間通信(Vehicle to Infrastructure)も多数の自律自動車が路上を走行する時代には欠かせないテクノロジーだ。信号機を廃止する以前の段階で普及している必要があり、アウディのシステムは、信号機の終わりの始まりなのだ。