人類が自滅の道を歩む可能性はどのくらいあるのだろうか。 さまざまな科学者がその可能性について研究しているが、基礎となる計算はシンプルなものだ。地球を破壊できるような力を有する人間の数と、それらの人々が力を行使する確率が主要なパラメータとなる。
力を行使する確率の計算は簡単ではない。というのも、そのような力を有する司令官たちの精神の安定性が影響するためだ。悪夢のシナリオの引き金が引かれる可能性はどれくらいだろうか?
力を有する人間の数を知るのはもっと簡単だ。20世紀後半から21世紀初頭においては、大量の核兵器を所有する米国とソビエト/ロシアの指導者の数が該当する。
したがって、少なくとも2人の人間が本当に文明を破壊する力を有していることになる。それらの人物の性格を考えると、決して安心できる状況ではないかもしれない。しかし、カリフォルニア州兵統合本部に所属するジョン・ソトス博士は、将来と比べれば、現状はまだ安泰だと語る。
文明を終焉させる技術の計算方法は大きく変わろうとしており、人類の結末は壊滅的なものだ、とソトス博士は言う。
20世紀には、世界中の人々が文明の存続に関わる脅威があることを認識していた。文明終焉の可能性はまさに、世界の2大強国、アメリカとソビエト連邦の政治戦略の重要な要素となっていた。
文明を終焉させる脅威は核兵器を支える技術に由来するもので、悪夢のシナリオは「相互確証破壊」と呼ばれた。両国が核兵器を兵器庫から解き放ち、相手を壊滅しようとするのだ。相互確証破壊は極めて悲惨な結果を意味するため、どちら側も引き金を引く利点はなかったし、そのような戦争は起こらなかった。
幸運によるのか思慮分別によるのか、相互確証破壊の戦略は今まではうまくいっていた。しかし米国とロシアは現在も地球を破壊できる力を有し、全面核戦争の脅威はいまだ地球上に存在している。
似たような脅威は、気候変動からももたらされている。ここでも、世界の経済大国を取りしきる比較的少数の人間が、制御するか放っておくかの力を有している。重要な不確定要素となるのは、温室効果ガスの破壊的な力を制御できるかどうかである。世界は地球を救う方向へ向かっているように思えるが、その方策の効果は不明だ。
そして今、新たな技術が世界的な脅威になりつつある。世界規模の感染により、大量の人間(ほぼ全人類に相当するかもしれない)を殺戮できる細菌を作り出す技術である。最近まで生物兵器の開発には、国家レベルでのみ実現可能な大規模な投資が必要だった。そのため、国際的な視点で注意深く監視することが可能であり、生物兵器の使用は国際協定によってほぼコントロールされてきた。
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