2017年9月12日、米国エネルギー省(DOE)は集光型太陽熱発電の技術を推進するために6200万ドルを投資すると発表した。この投資が、ライバルの再生可能テクノロジーを威勢よく打ち負かしてきた太陽光発電への投資を抑えることで成り立っていることは明らかだ(「One of the World’s Largest Solar Facilities Is in Trouble」を参照)。
報道向け発表によると、太陽光部門はDOEの「サンショット・イニシアチブ」が公表している2020年の目標、すなわち発電所規模の太陽光発電施設の電気料金をキロワット時あたり6セントまで下げるという目標をすでに達成したという。DOEは電気料金を下げるための研究を続けるが、「新しい資金調達プログラムは、トランプ政権にとって優先事項である幅広い範囲に焦点を当てる。もちろんそれには、太陽光エネルギーにとって重要な課題である送電網の信頼性や回復力、貯蔵に取り組む初期段階の研究も含まれている」。
集光型太陽熱発電は、改定された優先研究事項の一覧の上位にある。このことはDOE当局が、送電網の長期的な安定性について改善の余地があると考えていることを示唆している。集光型太陽熱発電が提供するエネルギーは太陽光発電よりもはるかに高価である一方で、エネルギーの一部を熱という形で貯蔵できる。すなわち、集光型太陽熱発電は太陽が照っていない時でも電力を生成し続けられるので、送電網上の需要と供給量のバランスをとるのに役立つというわけだ。
トランプ大統領の過去の行動を考えると、今回の発表は少なくともいくらかの疑惑を呼ぶ。DOEのリック・ペリー長官の指揮の下で、かつてないほど化石燃料を脅かしてきた太陽光発電への支援を減らして、技術の進歩を潜在的に減速させる新しい方法を探しているのかもしれない。結局のところ、サンショット・イニシアチブのプログラムを監督するエネルギー効率・再生可能エネルギー課の資金を70%削減するというトランプ政権の2018年予算案を追従しているからである(これまでのところ、議会はDOEの研究プログラムに対する削減案のほとんどを突き返してきた)。
しかし、それらすべてを踏まえた上で、エネルギー研究者たちは即座に、エネルギー貯蔵の課題は太陽光発電の非常に現実的な問題であり、集光型太陽熱発電の非常に現実的な長所であると強調する。
「現時点では集光型太陽熱発電は太陽光発電とは張り合えませんが、将来有望な研究分野はいくつかあります」と、スタンフォード大学のステイヤー・テイラー・エネルギー政策・金融研究所の執行役員であるダン・レイチャー教授は話す。「気候の課題を考えると、二酸化炭素を放出しない非常に多くの手段を用意しておく必要があります」。
集光型太陽熱発電は通常、鏡を使って太陽の光を集めて、その熱で液体を蒸気に変換してタービンを回転させる。熱の一部は溶融塩タンクを使って貯蔵できるので、太陽が照っていない時でも電力の供給を続けられる。
それに対して太陽光発電所は、高価な蓄電装置、もしくは他の形の外的な貯蔵設備がない限り、太陽が出ている間しか稼働しない。これは風力発電所でも同じだ。
とはいえ、集光型太陽熱発電は太陽光発電よりも高価で、技術的に難題であるとされている。とりわけ、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にある22億ドルのイヴァンパー発電所は、電力生産量の目標を達成し、競争力のある料金で電力を生産するのに苦戦してきた。現地のプレスエンタープライズ新聞は今年に入って、同発電所が天然ガスにますます頼っている現状を報道した。
しかし、集光型太陽熱発電の効率と費用を改善できる可能性がある前途有望な研究がいくつかある。DOEの壮大な挑戦であるARPA-E部門は2015年に、11件のプロジェクトに対して2400万ドルの資金提供をした。これらのプロジェクトは本質的に、二つのアプローチを「集光型太陽光発電技術」として知られるものへと集約することに焦点を当てている。レンズと鏡を使用して、太陽の光を小さな太陽光発電セル上に集中させるというものだ(「DOE Attempts to Jump-Start Concentrated Solar」を参照)。
「集光型太陽熱発電への投資は非常に理にかなっています」と、カリフォルニア州大学サンディエゴ校のエネルギー政策研究者であるデビッド・ビクター教授は電子メールで述べた。「太陽光発電に比較的過剰に投資しているのに、集光型太陽熱発電には十分に投資してこなかったという印象が私にはあります」。
新しいDOEプログラムの下では受賞者たちは自身の資金の20%を自腹で提供せねばならず、公的および民間の合計資金は1億ドルにのぼると同省は話す。
ジョージ・メイソン大学の科学・テクノロジー・イノベーション政策研究所の所長であるデビッド・ハート教授は、この資金調達方法の政治的動機については懐疑的にならざるを得ないと話す。しかし、政府の支援が市場成熟に達しつつある技術から離れて、さほど進んでいない技術へと移るのもまた適切であると語る。
「太陽光発電はもう成熟しており、残る課題のほとんどは製造と規模の経済に関するものです」とハート教授はいう。「太陽光発電は民間へと適切に手渡されたのです」。