スカイクール・システムズの若々しい顔つきの共同創業者、エリー・ゴールドシュタインは、カリフォルニア州バーリンゲームの窮屈な作業場所の脇にあるガレージの扉を引き開けると、四角い銀色のパネルのセットを駐車場に運び出した。スカイクール・システムズ(SkyCool Systems)はスタンフォード大学のスピンアウト企業だ。
パネルは太陽に向かって傾けられ、完璧なまでにしわのないアルミホイルのようなもので覆われている。そして、たくさんの配管パイプやチューブ、温度計を支えている金属製フレームに取り付けられていた。
その日のサンフランシスコ半島は気温が40度に達し、ベイエリアはまれに見る熱波に見舞われていた。パネルの正面に足を踏み出すと、まるで開いたオーブンの前を通り過ぎるような感じだ。
まさしく、そこがポイントなのである。スカイクールのパネルは基本的にはハイテクの鏡である。狭帯域の放射を空間に逃せる奇妙な光学的性質を持つ素材を利用して、従来の空調システムよりもはるかに効率的に建物を冷却するように設計されている (「The Sky May Hold the Secret to Efficient Air-Conditioning」を参照)。利用方法や気象条件にもよるが、建物の冷却に使われるエネルギーを10%から70%削減できる。建物の冷却は米国の送電網における単一用途の需要のうち最大のもののひとつだ。この需要を減らせれば、温室効果ガスの削減につなげられる。
パネルの仕組みを理解するには、少し説明が必要かもしれない。すべての物体は、光のスペクトル上で赤のすぐ右隣に位置する目に見えない光、赤外線のかたちで熱を放射する。上着、手袋、スカーフなどは、放射する熱をできるだけ維持することで、冬の日に身体を暖かく保ってくれる。主に水分子のかたちを取っている大気自体も、ためた熱の一部を放射している。
しかし、中赤外線 (波長が8から13マイクロメートルの光) の範囲におけるわずかな放射は、「宇宙に向かって開かれた窓」を通って、大気をすり抜けていってしまう。その波長内の光を放射する物質は、文字通り宇宙の極低温の大海原へ、あるいは少なくとも冷たい上層大気へと熱を放射するので、物質の表面温度は周辺空気の温度よりも低くなる。この自然現象は、晴れた日の夜空の下で、気温が氷点下に達していなくても、自動車の窓や草の葉の表面に霜が降りる原因となっている。
この仕組みを有効に活用するためには重要な課題があ …