KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
Wristband Communicates with a Nudge

スマートウォッチ失敗を反省
触覚で情報を伝達

触覚で情報を伝えるウェアラブルデバイス「Moment」は、スマートウォッチにがっかりした人も満足できる? by Signe Brewster2016.08.16

現在のモバイルデバイスは、音や画面でユーザーと意思疎通するが、ソマティック・ラボが設計した新しいリストバンドは、触覚で意思疎通する。

「Moment 」は、情報を振動で伝えるウエアラブルデバイスだ。携帯電話やスマートウォッチは、デバイス全体を振動させて「何かのアラート」を送るが、Momentは4つのモーターを使って、さまざまな種類の触覚フィードバックを用意している。

「実際、自分の肌を、まるで誰かが指で三角や矢印をなぞっているように、形を感じるのです。Momentが作れる形には、とてもたくさんの種類があります」(共同創業者兼シャンタヌ・バラCEO)

The Moment wristband has no screen, just four motors to deliver specific vibrations for different notifications.
Momentのリストバンドには画面がなく、さまざまな通知を特定の振動で伝えるために、4つのモーターだけがついている

ソマティック・ラボは、2017年の上半期に159ドル(キックスターター経由の注文129ドル)で、Momentの販売を計画中だ。またMomentにはGPSナビゲーション、メッセージ通知、メトロノーム機能も付いている。新たなGPSの道順が現れるたびに、携帯電話のスクリーンをちらっと見るかわりに、出口に近付くにつれて、自分の腕に矢印形が、より激しくなぞられることを想像してみるといいだろう。

アプリ、テキスト、その他のスマホ通知について、Momentは、個々の連絡先ごとに異なる触覚パターンを用意しており、新着メッセージが誰から届いたのかわかるようになっている。開発者にとっては、Momentの電話アプリにアクセスできるアプリを開発するチャンスだ。電話アプリは、ユーザーが初期設定して、Momentとやり取りする主要なインターフェイスだ。再通知させるには、ユーザーはリストバンドの脇のボタンを押して、ジェスチャーで設定すればよい。

バラCEOは、アリゾナ州立大学の、認知ユビキタスコンピューティングセンターでMomentを開発し始めた。バラCEOの研究は、障がいを持った人が使えるように、もともと広範囲に利用できるテクノロジーに注目していた。周囲の状況に対処するために、画面から目を離してもいいように、人々を助けたいというバラCEOの関心から、Momentは生まれたのだ。

Users interact with the Moment wristband primarily through an app, which will add new functionality as developers create more applications for the technology.
ユーザーは、Momentのリストバンドと、主にアプリを通してやり取りするので、開発者がMomentのために、より多くのアプリを作ってくれれば、それだけ新機能が増える

ペンシルベニア大学GRASPロボット工学研究所のキャサリン・クヘンベカー所長は、電子デバイスが人間と意思疎通する有効な新手法を、触覚が提供する、という。

「触覚による合図は、上手く設計されれば、個人的で、際立っていて、非常に表現力豊かになりえます。腕のウエアラブルは、両手での作業の邪魔をしないので、合図を送るにはとても理想的な場所なのです」(クヘンベカー所長)

触覚フィードバックはまた、通知を聞きにくい状況では必要不可欠だ。バラCEOは、作業機械のオペレーターが防音耳あてを付け、視界が限られている工場のような環境を想定している。Momentのようなデバイスは、問題発生時に、機械が人間にすぐにフィードバックできるだろう。

Momentの最初のバージョンは、使用頻度にもよるが、数日間から1週間分のバッテリー稼働時間がある。現時点のスマートウォッチやスマホはバッテリー寿命が短めであり、モーターが増えることになるMomentのような手法は、既存デバイスに統合されないだろう、とバラCEOはいう。

ソマティック・ラボとしは、アップルウオッチからMomentに買い換えて欲しいわけではない、とバラCEOはいう。ソマティック・ラボはスマートウォッチに幻滅している人がいることに気付いており、スマートウォッチのように、スマホより小さな形状でスマホの機能を再現するのではなく、Momentでは、スマホの機能を拡大することを意図しているのだ。

「もし人間の体用のウエアラブルを作るなら、人間の体が最も反応しやすいモノをつくるべきです。それが触覚なのです。私たちが考えているのは、間違いなく、広範囲な人々に訴えられる製品です」

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
シグニー ブリュースター [Signe Brewster]米国版
シグニー・ブリュースターは科学とテクノロジーのライター。特に注目しているのは、たとえば実質現実やドローン、3Dプリントなど、芽生えたばかりのテクノロジーが今後どうなるか、です。記事は、TechCrunch、Wired、Fortuneでも執筆しています。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る