カリフォルニア州のゲノム研究会社ヒューマン・ロンジェビティ(Human Longevity)が9月4日、ヒトゲノムを解読することで、そのゲノムの持ち主がどのような顔をしているかを予測し、個人を特定することができるという大胆な主張の論文を発表した。
DNAから人間の顔を写真のように復元できるという主張は、大きな影響をもたらす可能性がある。警察は血痕(に含まれるDNA)を使って容疑者をリストの中から選び出せるようになるだろうし、真の意味でプライバシーを維持したまま研究用にゲノムを収集することは不可能になってしまうだろう。
しかし、この主張に対してソーシャルメディア上で寄せられた科学者からの辛辣な反応は、ヒューマン・ロンジェビティの創業者である有名なゲノミクス専門家、J・クレイグ・ベンターが期待していたものではなかっただろう。
論文を査読した2名の専門家、そして1名の元従業員によれば、ベンターは実際には十分な集団の中からゲノムを使って個人を選び出すことはできておらず、そのため、ベンターの論文は掲載誌を探すのに苦労したという。
「クレイグ・ベンターはゲノムから顔を予測できていません」と、系統研究のWebサイトである「マイヘリテイジ・ドットコム(MyHeritage.com)」のヤニフ・エーリッヒ最高科学責任者(CSO)は単刀直入にツイートしている。エーリッヒCSOは主張に際し、ベンター自身も自分のゲノムで顔予測を行っているが、その結果は元生物学者で起業家である彼自身よりも俳優のブラッドリー・クーバーのように見えると投稿している。
ベンターのチームは、ゲノムデータを使用して顔の形状、目や髪の色、そして声の印象までも予測し、ゲノムの持ち主が誰であるかを再特定するのに十分な精度を持ったレベルのイメージをつくりだせるという。
しかし懐疑論者は、ヒューマン・ロンジェビティは実際にはその人物の人種と性別のデータ(もっと単純なDNAテストで判別でき、新しいアイデアでもない)を使用し、同社が主張しているような特定の個人ではなく、平均的な顔を表現した画像を作成しているにすぎないと指摘する。
ヒューマン・ロンジェビティは今回の手法を使って、20名の顔写真の中から70%の確率で正しい人物を選ぶことができたと報告している。しかし、対象とは異なる性別や人種の人々を排除した後では、その正確性は大幅に下がっている。20名の欧州人男性の中から特定の欧州人男性を選ぶケースでの正解率はたったの11%だった。
「この顔予測は、人種の平均的な顔を予測しているだけなのです。おそらくあなたも必ずこう言うでしょう、『わあ、まるで自分の顔みたいだ!』」と、ヒューマン・ロンジェビティで働いていた遺伝学の専門家ジェイソン・パイパーは言う。パイパーはこの論文の著者として名を連ねているが、現在はアップルで働いており、論文の結論は不当なものだとしてツイッター上で批判を展開している。
一か八か
顔予測についての研究は、100万人のヒトゲノ …