2億4000万ドルをかけて新設されるマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究所は、最新の機械学習アルゴリズムを強化する斬新なデバイスや新材料を開発することで、人工知能(AI)を進化させそうだ。最先端のAIに対するIBMの評判を取り戻すことにも貢献するかもしれない。
IBMとMITが2017年9月7日に発表したプロジェクトは、マシン・ビジョンや音声認識などの分野を大きく進化させたAIの手法、深層学習における新しいアプローチを研究するものだ。AIの性能をさらに高めるために、非常に強力な機械となる可能性を秘めた量子コンピューターの利用を含む、全く新しいコンピューティング・デバイス、材料、そして物質現象を探究する。
「標準的なシリコンやアーキテクチャを使ったイノベーションは多く起きていますが、デバイスや材料科学の分野ではどうでしょうか?」と、IBMリサーチでAIを担当するダリオ・ジル副所長は語る。「まだ誰も触れていない分野です。そして、桁外れな性能向上をもたらす可能性を秘めています」。
新しい研究所は、保険医療やセキュリティなどの産業分野で、さらに効果的にAIを活用する方法も研究する。非常に重大な問題である、AIと自動化による経済への影響についても研究する予定だ。
IBMとMITの取り組みは、MITにとって重要な意味を持つ。MITは1950年代にはAI研究の最前線に立っていたが、最近ではグーグルやフェイスブック、マイクロソフト、そしてアマゾンといった巨大テック企業が先端に立ち、AIの中心は西海岸へと移っている。
今回の投資はまた、IBMにとっても変革のきっかけとなるかもしれない。IBMは1997年にチェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフを打ち負かした「ディープ・ブルー(Deep Blue)」の開発によって、AI戦略を前面に押し出した(“How the Chess Was Won”参照)。2010年にクイズ番組「ジョパディー!(Jeopardy!)で勝利を収めたスーパーコンピューター「ワトソン(Watson)」は、最先端の機械学習と自然言語処理技術を使用していた。しかし、最近ではAIの研究においては他の …