カリフォルニア大学デービス校の研究者が、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁) の発行した洪水地帯マップを書き換えた。ヒューストン周辺地域の壊滅的な洪水災害状況を捉えた衛星画像を追加したのだ。テキサス州に8月末に上陸した大型ハリケーン「ハービー」によるヒューストン周辺地域全体の降雨量が1000ミリを超えた後のことである。
予備的なアセスメントの結果によると、洪水に見舞われた地域の3分の2が、FEMAが100年単位で指定する氾濫原から外れていたという。これらの地域が洪水に見舞われる確率は毎年、わずか1%程度のはずだった。しかし、ハリケーン・ハービーによる大規模洪水の半分以上が「あらゆる洪水浸水想定区域から外れた地域」で起こった。500年に1度の災害予測も含めてである。「洪水が起こる危険が最も低い」地域のはずだったのだ (「How Much Is Climate Change to Blame for Tropical Storm Harvey?」を参照)。
想定外の事態であったことも災いして、テキサス州沿岸部を何日間も襲ったハリケーンの被害は、他に例を見ないほど深刻なものになった。しかし、同時に、連邦政府による洪水発生リスク予測が不十分なものであることが浮き彫りになった。というのは複数の推定によると、カリフォルニア大学デービス校の研究者が指摘するように、ハリケーン・ハービーは「過去3年間でヒューストン地域を襲った3度目の、500年に1度レベルの洪水」になるからだ。
カリフォルニア大学デービス校流域科学センター副所長のニコラス・ピンター教授は、「ヒューストンが尋常でない『悪運』に見舞われたという見方は、まったくもって正しくありません」とメールで述べている。「科学者はどんな天候事象からでも、気候変動の影響を読み取ろうと極端に注意しています。それは科学者として妥当なことです。しかし、それを差し引いても、米国が気象的な転換点に差し掛かっている疑いが濃くなってきています」。
非常に重要な問題点として、洪水発生予測マップは過去の歴史的な傾向に基づいて作成されていることが挙げられる。すなわち、気象状況が移り変わっている現在の危険から、ますますかけ離れたものになりつつある。そうなると、歴史的な傾向に基づくアセスメントで、政策、建築基準法、保険プログラムを計画し、災害発生のパターンを予測するのは、危険なほどに時代遅れということになる。多くの場合、米国の都市設計や洪水対応策は過去の気象データに基づいたもので、未来の気象条件を考慮していないどころか、 …