ブロックチェーンが変えた
フィンランドの難民支援
身分証明がない、銀行口座が作れない——。そんな難民の課題を、フィンランドはブロックチェーンを活用した新しいシステムで解決しようとしている。 by Mike Orcutt2017.09.07
新しい国にやってきた難民にとって、少なくとも公的な意味において取り戻すのが一番難しいものは、身分証明かもしれない。しかし公的な身分証明なしでは、社会進出はほとんど不可能だ。
多くのヨーロッパの国々と同様、難民の大量流入に直面しているフィンランドは、分散型元帳テクノロジーのブロックチェーンを活用して難民が速やかに自立できるように支援している。
フィンランド移民局は2年前から、銀行口座を持たない難民に対して、現金による経済支援に代わってプリペイド式のマスターカードを配布している。現在の利用者は数千人。ヘルシンキを拠点とするスタートアップ企業モニ(MONI)が開発したこのカードは、ブロックチェーン上に記録された独自のデジタル・アイデンティティにも紐づけされている。カードに使われているテクノロジーは、電子マネー「ビットコイン」を支える技術と同一のものだ。
ビットコインは、企業による仲介なしに個人間で取引するときに、ブロックチェーンのテクノロジーがどう役立つかを示してくれた。テクノロジーの核となるのは、すべてのビットコイン取引を永久に記録するソフトウェアプロトコルだ。取引記録はブロックチェーンと呼ばれ、ビットコインのソフトウェアをダウンロードすれば誰でもアクセスできる。ソフトウェアを実行中の世界中のコンピューターがブロックチェーンを管理し、新たな取引を承認している( “What Bitcoin Is, and Why It Matters”参照)。
ブロックチェーンは近代的な金融サービスを利用でき …
- 人気の記事ランキング
-
- IU35 Japan Summit 2024: Nobuyuki Yoshioka 「量子コンピューターの用途解明、新たな応用へ」吉岡信行
- Useful quantum computing is inevitable—and increasingly imminent それでもなお、 量子コンピューターが 人類に必要な理由
- Why the next energy race is for underground hydrogen 水素は「掘る」時代に? 地下水素は地球を救うか
- How the Rubin Observatory will help us understand dark matter and dark energy 見えない宇宙の地図描く ルービン天文台が挑む、 95%の「暗黒」の謎