ティム・クック:ワシントン・ポスト紙のインタビューの行間を読めば、アップルの今後が見えてくる
ビジネス・インパクト

How to Read Between the Lines of Tim Cook’s Epic Interview 5年目ティム・クックCEO
インタビューの行間を読む

アップルのティム・クックCEOがワシントン・ポスト紙で多くのことを語ったが、語らなかったことにも興味深いものがある。 by Jamie Condliffe2016.08.15

ティム・クックCEOがアップルのCEOに就任して5年を記念し、これまでの経験について非常に長い独占インタビューをワシントン・ポスト紙が掲載した。しかし、発言しなかったことにも、業績と同様に興味深いものがある。

全部で1万語にもなるこのインタビューは、スティーヴ・ジョブズを引き継いだ思いから、クックCEOの社会問題に対して滅多になくはっきりとした発言まで多岐にわたる。しかし、近く登場するアップルの製品や機能の開発についても長時間話しをした。では、クックCEOの発言の行間を読んでみよう。

「記者の質問は、アップルが人工知能(AI)開発に遅れているかのように聞こえる。その点について、2011年以降Siriを送り出しているのだが」

クックCEOは、「アップルがフェイスブック、グーグルやアマゾンのような会社にAI開発で追いつく必要がある」ことを認めつつも、イェーナ・マクレガー記者に、事実に基づいて反論した。クックCEOが、Siriによってアップルは人工知能で先陣を切ったが、グーグルがすぐさまそれに対抗したのだと主張するのも当然だ。ここ数年、グーグルやアマゾンなどが発表するAIシステムは、確かにアップルを上回っている。アップルの新機能の多くが今年のWWDCで発表されたが、顔認証やより直感的な予測タイプ入力のような、機械学習を基にした新しいソフトウェア機能は以前からフェイスブックやグーグルの製品には存在した。だが、アップルに競争力があるのはプライバシーだ。アップルの最新のAI処理は全て、クラウドではなく個人の端末で実行される。つまりデータは(理論的には)利用者の管理下にあるのだ。

「拡張現実は極めて興味深く一種のコアテクノロジーであると思います。そう、だからアップルも秘密裏に多くのことを進めています」

アップルが仮想現実と拡張現実を実験していることは秘密ではない。1996年のWWDCでは「バーチャルI/Oヘッドマウントディスプレイを使ったアップルコンピュータのプロトタイプウェアラブルコンピュータ」が展示された。さらに最近、アップルはVRヘッドセットに関する特許を公開し、実質現実と拡張現実のために、3Dグラフィック開発の経験があるスタッフを雇った。また、買収したいくつかのARスタートアップの中にはプライムセンスメタイオもある。クックCEOは、ちょうど数週間前の収支報告に触れ、アップルはARに投資し、これからもそれを続けると述べた。しかし、その研究開発の結果がどのようになるかについて、全く不透明なままだ。最もありそうなことが、アップルは、バイドゥが最近発表したプラットフォームのような少しインテリジェントな機能で、最も単純化したポケモンGOの後を追うことではないだろうか。バイドゥのシステムは、機械学習を使って現実世界を詳細化するが、その機能を多くの広く利用されているアプリに実装する計画だ。単に推測に過ぎないが、アップルはAR機能を主要なアプリに付加する同様の戦略をとるかもしれない。

「スマホが何をして、何をしないかは、本質的に何億もの人々を危険に晒すトレードオフだとわかってきました。実際に明確な決断が必要だと思いました。困難ですが、明確な決断です」

アップルのCEOは、サンバーナーディノのiPhoneの解除ついてFBIと対立する会社の決定を議論するの中で、自信だけはあった。ワシントン・ポスト紙に対し、アップルの技術者は、すぐにiPhoneを解除できる権限を持つツールを作れたが、真の問題は、それを実行すべきかどうかだったと説明した。MIT Technology Reviewが指摘したように、この問題に関し技術的な妥協点はなかった。司法当局に端末の暗号を解除させ、他の人が同じ様な方法を発見するリスクを負うか、そうしないかだ。しかしクックCEOは、自分が間違っている可能性も考え続けた。そして間違っていること示すような説得力ある議論も存在した。クックCEOは、司法当局はソフトウェアによる端末の解除には関与すべきではないが、当局は「誰かの目の前に現れて、携帯を見せなさいといえる。つまり、そうするように命令できる法律、従わないとなんらかの罰も課す法律を通すこともありうる」と過去に述べたことがある。これに関してはいくつか問題がある。その方法だと、死亡した人のスマホはどうにもできない。米国憲法修正第5条が保障する、自己に不利益な供述は強要されない保護を弱め、その選択が有罪に対する証拠の提出や単に法廷侮辱罪になるような場合、犯罪者に有利になる可能性もある。簡単に言うと、クックCEOがいうほど単純な話ではないはずだ。

「アップルが発表していないことについての質問には答えられません。アップルはお客さまが驚くようなことをしてきた会社です。アップルのもうこれで十分ということはないのです」

クックCEOは、アップルが車を開発していることについて、多くを語ろうとしなかったかもしれない。しかし、自動車に関し何かしていることは皆が知っている。アップルは、すでに自社のソフトウェアをCarPlayとして車に導入しているし、さらに先に進んでいることも明らかだ。アップルは、自動運転車を作るために必要な専門知識のある多くのロボット工学技術者を大量に抱えている。昨年後半に、ある業界情報筋がMITテクノロジーレビューに明かしたように、アップルの子会社に在籍する技術者とその人物は会い、自動運転技術について話をしたという。この会社が正確に何に取り組んでいるかについて噂が広まり続けているが、最新の情報では、アップルが車全体を作るというよりむしろ、自動車のために自律ソフトウェアを構築している可能性が高いという。クックCEOが示唆しているように、私たちはただサプライズ発表を楽しみに待つだけなのかもしれない。

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