わずか23グラムの極小宇宙探査機は兄弟惑星にたどり着けるか
太陽系に最も近い恒星の1つ、ケンタウルス座アルファ星系に惑星が発見され、大いに注目されている。中でも、同星系に直接、極小の宇宙探査機を送り込もうという野心的な計画は、科学的な見返りはともかく、魅力的な提案に思える。 by Emerging Technology from the arXiv2017.09.04
2016年、少数の天文学者から成るグループは、太陽系からもっとも近い恒星のひとつ、アルファ・ケンタウリ(ケンタウルス座アルファ星)系の赤色わい星プロキシマ・ケンタウリを周回する地球に似た惑星の発見を発表した。プロキシマ・ケンタウリbと呼ばれるこの太陽系外惑星は、中心星からの距離が生物の生存可能な範囲内にある。水が液体で存在しているはずで、地球外生物探査における有力候補になっている。
発見の当然の帰結として、プロキシマ・ケンタウリbは大いに関心を集めている。この惑星は地球からおよそ40兆キロ、光の速度で4年余りという距離にある。光速の10分の1の速さで飛ぶ宇宙船なら約50年ほどで到達できる。
ということは、今日地球上に生きている人間が生きている間に、プロキシマ・ケンタウリに到達できる宇宙船を製造できるのではないだろうか。
この問いに対するある種の答えを、英国ロンドンの非営利団体、インターステラー ・スタディーズ・イニシアチブ(Initiative for Interstellar Studies)のアンドレアス・ヘインのチームが提供している。ヘインらは、同星系の初歩的な観察をした結果を地球に送り返せる機器を備えた、グラム単位の小さな宇宙探査機の計画を立てているのだ。「アンドロメダ探査機(Andromeda probe)」と名付けたこの極小宇宙探査機は、数年内にプロキシマ・ケンタウリと兄弟星に向けて飛行を開始できるかもしれないと言う。
しかし不安材料もある。探査計画に必要な技術の一部はすでに存在するか、近い将来手に入るであろうが、他はまだまだ不確実だ。
アンドロメダ探査機の基本設計は単純だ。基本的にはスマートフォンカメラの中身をパワーアップしたものであり、12メガピクセルのモノクロカメラ、レンズ、慣性センサー、磁力計で構成する。原子力電池と初歩的な舵取り機能、通信システムを備えており、「探査機の総重量は23グラムになります」とヘインたちは述べてる。
アンドロメダ探査機の推進力はレーザー光線だ。過去にも他のいくつかのグループが試みようとしたことがあるこのアイデアは、探査機に光を受け止める帆を付け、とてつもなく強力なレーザー光線を照射してプロキシマ・ケンタウリに向けて加速させようというものだ。レーザー照射光源は地球の軌道上に設置し、連続出力は15ギガワットである。
ヘインたちはアンドロメダ探査機を製造する上での技術的な課題について、レーザーシステムは別にして、概略のすべてを説明している。
もっとも重大な課題は深宇宙の航行である。探査機の航行精度の大部分はレーザーの指向精度に依存する。ナノラジアン単位の精度を実現できるかどうかが鍵となり、現代の宇宙船のいくつかに似た要件になるという。例えば、米航空宇宙局(NASA)が開発中の宇宙望遠鏡「ジェームス・ウェブ望遠鏡」は24ナノラジアンの指 …
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