ビットコインの匿名性はどこまで信頼できるのか
ビットコインを使った取引は匿名性が担保されていると考えられている。ところが、ビットコインを利用できるショッピングサイトを調べたところ、Webトラッカーによる取引データの漏洩から、特定の個人とビットコインアドレスは結びつけられることがわかった。犯罪を追求する司法当局に注目される可能性がある。 by Emerging Technology from the arXiv2017.08.30
暗号通貨ビットコインで支払えるオンラインショップは増加している。ビットコインで重要なのは匿名性が担保されていることだ。取引は記録され公開されるが、電子的なアドレスとのみ結びつけられている。そのため、ビットコインで何を購入しても、その購入は追跡できず、なによりも購入者を特定できない。
ビットコインの匿名性を便利だと感じる人はいるが、決して完璧ではない。セキュリティの専門家は、ペンネームで書籍を出版するようなものだとし、「ペンネームのプライバシー」と呼ぶ。ペンネームが本人に結びつかない限りは、その人のプライバシーは保護される。しかし、誰かが匿名で出版した書籍のうちの1冊でも本人に結びつけられれば、こうした計略は暴かれてしまう。ペンネームで書いてきた書籍すべてが、誰が書いたかが周知のものとなる。同様に、個人情報がビットコイン・アドレスに結びつけられればすぐに、購入履歴も明らかになってしまう。
ここで、匿名で購入するためにビットコインを使いたいと考える人たちにとって重要な疑問が浮かぶ。ビットコインの取引と取引をした個人を結びつけるのは、どれくらい簡単にできるのかということだ。
プリンストン大学の博士課程生スティーブン・ゴールドフェダーと多くの同僚による研究で、この疑問への解答を得られる。ゴールドフェーダーと同僚は、購入者がコインジョイン(CoinJoin)のような追加のプライバシー保護手段を使用したとしても、通常の購入課程における情報漏洩がそのまま個人の特定につながっていく仕組みについて説明している。
主な原因となるのは、Webトラッカーとクッキー(意図的にWebサイトに組み込まれ、訪問者のサイト利用状況を第三者に送信する小さなコードの断片)である。よく目にするWebトラッカーは、グーグル、フェイスブックなどに情報を送信し、ページの利用状況、購入金額、訪問先のサイトの傾向などを追跡する。氏名、住所、メールアドレスなど、個人が特定される情報までも送信するトラッカーも存在する。
こうして、取引に関する情報がWebに漏洩し、政府、司法当局、悪意のあるユーザーが情報を収集し、分析できる状態となる。
ゴールドフェーダーらが調査した「可能性」は、この情報を使用して個人と、ビットコインでの取引を結びつけるのがどれくらい簡単なのかということである。このプロセスは、 …
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