テスラ(電気自動車メーカー)とソーラーシティ(太陽光発電事業者)という2つの環境保護系テック企業のリーダーとして、イーロン・マスク(ソーラーシティでは会長職)は大胆な主張に倍賭けする習慣がある。またマスク会長はソーラーシティの最近の業績発表に出席し「そういえば」と切り出して、同社の屋上設置型太陽光パネル製品のラインナップに「ソーラールーフ」(roof:屋根)を追加する、といった。
マスク会長も述べたが、屋上設置型太陽光パネルと「ソーラールーフ」は別物だ。ソーラーシティはすでに住宅の屋根に設置する太陽光パネルを販売中だ。「ソーラールーフ」はマスク会長がいうとおり「屋根に載せるではなく、それ自体が屋根なのだ」。
ソーラールーフの別名は「太陽光屋根板」で、以前にもあった。2011年、住宅用太陽光発電に新市場を切り開こうとしてダウ・ケミカルが「パワーハウスソーラー」を発売したのだ。商品は当時、大々的に宣伝され、同社のアンドリュー・リバリスCEOは、パワーハウスは「ダウ・ケミカルの事業改革と一体をなし、新しいテクノロジーを発明して変革するための戦略の一部です」といった。ダウ・ケミカルはミシガン州ミッドランドに工場を建設し、屋根板を製造するために、自動車メーカーの元労働者が再教育され、数百人もが雇用された。
ダウ・ケミカルの宣伝文句は、政治家の選挙演説のように聞き心地がよく、ソーラーシティがニューヨーク州バッファローに巨大工場を建設する前口上なのだ。環境に負荷をかけないエネルギーの仕事が、かつて製鉄所で栄え、主要産業を失った都市を再生させる物語なのだ。
だが、ダウ・ケミカルの計画は失敗した。7月、同社はパワーハウスソーラー事業の中止を発表し、製造を終了した。最後の屋根板は水曜日に出荷される予定で、同社の太陽光発電部門の130名の労働者の「大半」は、ミシガン州ミッドランドとカリフォルニア州クパチーノで一時解雇(全体的な解雇計画の一部で、ミシガン州では700人、全世界では2500人が解雇予定)される。
ソーラーシティの製品は最高の出来で、ダウ・ケミカルの屋根板とはまったく別物かもしれない。また、ソーラーシティが損失を出し続けているとしても、同社の命運が尽きたわけではない。ソーラーシティの最大の問題は、顧客に自社製太陽光パネルをリースする事業を構築しておきながら、最近は、ソーラーパネルを顧客自身が所有したほうがメリットがあることなのだ。したがって、ソーラーシティが太陽光パネルを製造し、リースするのはでなく、販売するのであれば、同社の業績は回復するかもしれない。
しかし、マスク会長とソーラーシティはむやみに拡大した巨大工場を抱えながら前進しようとしており、停滞した地域経済を再生可能エネルギーで復活させようとして失敗したダウ・ケミカルの二の舞を避けようとしている。つまり、ソーラーシティの工場が実際に何かを製造し、実質的に資金援助したニューヨーク州を信用させるまでは、そうしなければならない。