KADOKAWA Technology Review
×
【1/31東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
光合成を効率化した
遺伝子組み換え作物が
食糧危機を救う
WHITTEN SABBATINI
カバーストーリー 無料会員限定
To Feed the World, Improve Photosynthesis

光合成を効率化した
遺伝子組み換え作物が
食糧危機を救う

植物科学者は、遺伝子組み換え技術を用いて光合成の効率を上げた植物をつくることで、近い将来訪れるであろう深刻な食糧不足を未然に防ごうとしている。 by Katherine Bourzac2017.08.22

米国イリノイ州中部に位置するさわやかな温室内で、騒がしくも作業に集中する2人の科学者が実験用植物の種を播いている。鉢いっぱいに詰め込んだ湿らせた土壌の上に、ガラス瓶を注意深く傾けて、小さな黒褐色のタバコの種子を播いていくのだ。数カ月後に科学者はこのタバコを畑に移し、通常より大きく、あるいは早く成長するかどうかを観察する。2050年の世界を救うための重要なステップだ。

このタバコは、通常のバイオテクノロジーを用いてつくられた作物よりも深いレベルで遺伝子組み換えを受けている。植物が光合成を行う反応に手を加えることで、太陽光と二酸化炭素を炭水化物に変換する際の効率を改善したのだ。食用作物にこの技術を用いることができれば、同じ広さの土地で生産できる食糧を増やし、より少ない水と化学肥料で食糧を生産できるようになるだろう。

事態は急を要する。国連の推定によると、増加しつづける人口を養うためには、世界の農業生産量は2050年までに今より50%も増えなければならないという。しかも、この厳しい目標には気候変動の影響は計算に入れられていない。植物は二酸化炭素を利用するが、きわめて暑い気候は作物の収穫量を低下させる。世界の多くの地域で、気候変動がもたらす気温の上昇と干ばつの増加によって、甚大な被害がもたらされる。しかも、これらの負の効果は「貧困層にもっとも大きく影響します」と、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に本部を置く国際共同事業、光合成効率向上実現(RIPE)プロジェクトのスティーブ・ロング ディレクターは言う。

ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が資金拠出するこのRIPEプロジェクトはタバコの研究から開始したが、これは遺伝子組み換えが比較的容易だからだ。RIPEの真の目 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. How a top Chinese AI model overcame US sanctions 米制裁で磨かれた中国AI「DeepSeek-R1」、逆説の革新
  2. OpenAI has created an AI model for longevity science オープンAI、「GPT-4b micro」で科学分野に参入へ
  3. 10 Breakthrough Technologies 2025 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る