フェイスブックが殲滅宣言
広告ブロックとの長期戦開始
フェイスブックは、何百万人のユーザーが広告を表示せずにFacebookを利用していることを「サービスただ乗り」とみなし、広告ブロッカーとのイタチごっこを始めるつもりでいる。 by Tom Simonite2016.08.09
Facebookの使用は取引と同じだ。インターネットで交流できるかわりに、フェイスブックは広告主にユーザーが感じたこと、見たこと、出会った人の情報を売り渡している。
しかし今日、フェイスブックは何百万人のユーザーがその取引を偽り、ウェブブラウザーで広告ブロックを使っていると考えているとした。そこでフェイスブックはサイトを微調整し、広告が広告ブロッカーを回避できるようにすると発表した。
これは面白いことになる。広告ブロッカーの開発元がユーザーを満足させるために、「「広告の回避」のフェイスブックによる回避」を回避しようとするはずだからだ。ネット広告業界の概算では、米国では4500万~7000万人がデスクトップパソコンで広告ブロッカーを使っている。たとえば「Adblock Plus」は最も人気のある広告ブロッカーで全世界に1億人以上のアクティブユーザーがおり、グーグルなどのネット企業から、広告ブロックの迂回料さえ得ているのだ。
Adblock Plusも競合製品も、広告ブロックを潰そうとする企業との激しい競争を繰り広げている。しかし、広告ブロック側の解決策は100%効果的ではない。フェイスブックはより強力な、広告ブロックに消されない広告を作れる。フェイスブックはメディア企業より、ブロックの回避に多くの開発者を割り当てられるし、広告の表示方法も細かく制御できる。
広告ブロッカーの基本設計は、ユーザーがウェブページにアクセスするとき、記事と広告は別のドメインから配信されることが多い、という事実を上手く利用している(ネット広告は、メディア企業自身が配信する場合より、広告ネットワークにアウトソーシングされていることが多い)。Adblock PlusやuBlock Originのようなツールは、広告コンテンツの配信元のドメインを「ブラックリスト化」して広告をブロックしているのだ。
そこでフェイスブックは、広告ブロッカーの中心的機能であるブラックリストを無効化できる、といっているようだ。もしフェイスブックが、友だちの写真と広告コンテンツを同じドメインから配信すれば、広告ブロッカーは記事と広告を区別できなくなる。
しかし、広告ブロッカーが永遠に締め出されるとは限らない。フェイスブックはユーザーを混乱させないように「スポンサー」のように表示し、広告であることを明白にしなければならない。「広告」「スポンサー」などの表示は、広告ブロッカーには広告と識別する手がかりになる。フェイスブックは広告ブロッカーとの戦争において、強烈な初弾を放ったが、最後の一発にはならないだろう。
関連ページ
- Wall Street Journal
- New York Times
- “The Ad Blocking Kingpin Reshaping the Web as He Prefers It”
- “Are Ad Blockers Needed to Stay Safe Online?”
- 人気の記事ランキング
-
- What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- Google DeepMind has a new way to look inside an AI’s “mind” AIの「頭の中」で何が起きているのか? ディープマインドが新ツール
- This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
タグ | |
---|---|
クレジット | Photograph by Drew Angerer | Getty |
- トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
- MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。