ねつ造ニュースとソーシャル・メディアでの拡散は、現代社会の重大な脅威のひとつとなりつつある。最近では、ねつ造ニュースが株式市場の操作や、危険な医療ケアの選択、2016年の米国大統領選など選挙への介入にまで利用されている。
ねつ造ニュースの拡散を防ぐのは、今や明白な喫緊の課題となっている。そこで、ある重要な疑問が湧いてくる。ねつ造ニュースは、そもそもどのようにして拡がるのだろうか。
インディアナ大学ブルーミントン校のチェンチェン・シャオ訪問学生と研究チームは、その答えにつながりそうな研究結果を発表した。研究は、ツイッターでねつ造ニュースがどのように拡散するかを初めて体系的に調査したものだ。その不可解な世界への優れた見解を示し、この問題を制御する明確な戦略を提案している。
問題となっているのは、ねつ造または誤解を与えるニュースの発信だ。その蔓延はあまりにひどく、オンライン情報の正確性を調べるため、snopes.com、politifact.com、factcheck.orgなど数々の独立系事実確認団体も生まれた。
独立系事実確認団体のサイトには、ねつ造ニュースを頻繁に発信している122のWebサイトがリストになっている(infowars.com、breitbart.com、politicususa.com、theonion.comなど)。「風刺サイトも対象に含めています。多くのねつ造ニュースのソースが、自分たちのコンテンツは風刺だと主張しており、判別が難しいためです」と、シャオのチームは説明する。
同チームは、これらのねつ造ニュースWebサイトによる40万本の記事を監視し、ツイッターを通じてどのように拡散したかを追求した。研究のため、ねつ造ニュースに関係したツイッターの投稿を約1400万件を集めた。
同時に、事実確認団体によって書かれた約1万5000本の記事と、記事に関係した100万件以上のツイッターの投稿も調べ上げた。
次に、このニュースを拡散したツイッターアカウントを調べ、それぞれのアカウントの最新ツイートを最大200件ずつ集めた。この方法によって、ツイート動向を分析して、アカウントが人間が使っているものか、ボットによって使われているかを推測できる。
それぞれのアカウントの持ち主を判断し、最後に、人間やボットがいかにしてねつ造ニュースや事実確認がなされたニュースを拡散するのかを調べた。
研究チームは、2つのオンライン・プラットホームを開発した。ひとつはホアクシー(Hoaxy)と呼ばれ、ねつ造ニュース記事の拡散を追跡し視覚化する。もうひとつはボトムメーター(Bolometer)といって、ツイッターのアカウントを使っているのが、人間かボットかを見極めるものだ。
研究結果を読んでみるとかなり興味深いことが見えてきた。「偽情報を頻繁に拡散しているアカウントは、ボットである確率が著しく高いです」と、シャオはいう。「ソーシャル・ボットが、ねつ造ニュースの拡散に重要な役割を果たしているということです」。
シャオのチームは、ねつ造ニュースが公開された直後、拡散のためボットがとりわけ重要な役割を果たしていると語る。さらに、ボットは影響力のあるユーザーへツイートを発信するようプログラムされているという。「世間が関心を寄せるねつ造ニュースの拡散初期の段階で、自動アカウントは特に動きが活発です。そして、影響力のあるユーザーをターゲットにする傾向にあります」
賢い戦略だ。情報は、ソーシャル・ネットワークで広く影響力を持つ人を経由すると、急速に拡散する確率が高くなる。そのため、影響力の高いユーザーをターゲットにすることがカギとなる。人間は自動アカウントにコロッと騙され、そうとは知らずにねつ造ニュースの拡散の種を蒔いてしまうことがある(もちろん、分かっていてわざとやる人間もいる)。
実に興味深い研究で、ねつ造ニュースの拡散を抑える明快な方法を導き出せる。「研究結果から、ソーシャル・ボットを減らすことが、オンラインの偽情報拡散を抑える効果的な戦略であるといえます」と、シャオ訪問学生はいう。
確かに興味深い結論ではあるが、どうやって実行するかは明らかではない。
特定のソーシャル・ボットを禁止するという方法もひとつの手だが、正当な情報の拡散に重要な役割を果たしているソーシャル・ボットも数多く存在するため、一筋縄ではいかないだろう。
また、法律は国境を超えられない。過去にねつ造ニュースの拡散が外国からの操作だったことからも分かるように、法がどこまで対応できるか定かではない。
しかし、ねつ造ニュースの拡散は、正当で重大な社会的関心事なのも事実だ。ねつ造ニュースがどのように拡散するかを理解することは、対策への第一歩である。
(参照:arxiv.org/abs/1707.07592: The spread of fake news by social bots)