人間の手には、モノを取ったり、現実世界に関わったりするために1万7000もの感知センサーがある。義手や義足には触覚などの感覚器官がない。
スタンフォード大学の鲍哲南(ゼナン・バオ)教授は、圧力を感知し、傷を治癒し、知覚データを処理する電子皮膚で義肢を覆うことで、この常識を覆そうとしている。義肢に触感があれば、将来、人間の神経系につなげられる。それ以前でも、柔軟だが滑りにくい電子皮膚があれば、切断や火傷を負った患者が装着した義肢で丁寧に扱わないと壊れてしまうモノを掴むなど、生活に必要なことをこなせるかもしれない。うまくすれば、切断した四肢の痛みを感じる「幻肢痛」を緩和できるかもしれない。
人間の手の能力を真似るために、さらにある意味では凌ぐために、バオ教授は電子皮膚の設計を根本から見直している。電子皮膚は実際の人間の皮膚同様、圧力に感じられるだけではなく、軽くて耐久性があり、伸び縮みしやすく、柔らかて、自然治癒力を備えているべきだ。また、電子皮膚は義肢を覆うように大きなシート状で製造さ …