市販向け自律自動車の開発競争が激化し、車両の周囲の状況を調べるためのレーザー・センサーの需要が高まっている。しかし、実験的な自動運転車両で現在使われているハードウェアの安価版では、幹線道路を走行する際に必要になる品質のデータが得られない可能性がある。
ほとんどの無人乗用車は、レーザー・ビームを近くの物体に照射して跳ね返りを測定するライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)センサーを使用して、周囲の3D地図を作成する。ライダーはレーダーより高品質のデータを得ることができ、環境光の変化に影響されないため光学カメラより優れている。もっともよく知られているライダー・センサーの例は、マーケット・リーダーであるベロダイン(Velodyne)が開発したもので、読者もおそらく目にしたことがあるだろう。回転するコーヒー缶のような外観で、ウェイモ(Waymo)やウーバー(Uber)といった企業が自社の自動車の屋根に取り付けている。
しかし、すべてのライダー・センサーが同じような性能を持っているわけではない。たとえば、ベロダインの製品レンジは広範だ。コーヒー缶そっくりの8万ドルもするハイエンドモデルのHDL-64Eは、64本のレーザー・ビームを、それぞれが重なるように照射する。各ビームは0.4度の角度で分離され(ビーム間の角度が狭いと解像度が高くなる)、到達距離は120メートルである。一方、小型サイズのローエンドモデルのパック(Puck)は、8000ドルだ。パックは2.0度の角度で分離された16本のレーザー・ビームを照射し、到達距離は100メートルである。
これらの数値の違いが意味することを確認しよう。以下の映像を見てほしい。上はHDL-64Eの生データで、下はパックのものだ。高価な製品のセンサーによる64本の水平に伸びる線条は風景を詳細に描出するが、安価な製品が生成する画像では、物体が自動車にかなり近づくまで発見しづらい。いずれのセンサーも到達距離は名目上同程度だ。しかし、パックは解像度が低いため、障害物が車両に相当近づくまでほとんど役に立たない。
時速約110キロで走っている場合、例えば60メートル先に物体を発見したとすると、2秒でその物体の位置に到達してしまう。時速110キロの自動車は、減速を開始してから停止するまでに100メートル走行する。自律自動車が真に安全なものとなるには、ほぼ200メートル先の物体を捉えられる必要があり、これが目指すべき目標だ。
ここにコストの問題が関わってくる。8000ド …