KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
Britain Is Getting Rid of the Internal-Combustion Engine

英国、ガソリン車も販売禁止へ 世界は電気へ動くのか

欧州ではディーゼル車の規制が進んでいるが、イギリスは2040年にディーゼル車だけでなくガソリン車の販売も禁止する。自動車産業は電気自動車へスムーズに移行できるのだろうか。 by Jamie Condliffe2017.07.27

ガソリンの奇妙に心地よいかすかな匂い、エンジンのゴボゴボいう音、排気ガスのつんと鼻を突くような匂い——。遅かれ早かれ、すべての自動車が電動になると、これはノスタルジアでしかなくなる。そして、少なくとも英国ではそんな日がいつ来るのかは分かっている。2040年だ。

2040年、イギリス政府はガソリンやディーゼルで走る自動車やバンの新車販売を禁止する。BBCが報道しているように、それに先駆け、裁判所命令によって政府が導入した、違法レベルの二酸化窒素に対処する政策を推し進める。大気環境汚染の一因となる微細粒子は、推定で毎年300万人の命を奪っている

二酸化窒素排出に対する政策は、イギリスの大気環境を広範囲に改善する取り組みの一部で、約39億ドルにも及ぶ。そのうち約3億3000万ドルは地方自治体の排出削減対策のために交付され、ディーゼル車から通行料金を徴収するための費用も含まれている。

だが、環境保護主義者たちはそのような対策では不十分だという。イギリス政府は、当初提案していた全国の都市部においてディーゼル車の通行を禁止する政策は実行しないと決めた。また、ディーゼル車の所有者に、廃車やよりクリーンな車への買い換えを促す助成金の構想も見送る。

イギリス政府の決定は、多くのヨーロッパの都心部の道路からディーゼル車を排除しようという、昨今の動きに同調している。2016年、パリ、マドリッド、アテネは軒並み2025年までにディーゼルで走る自動車やバンを排除することを約束した。そして4月、ロンドンのサディク・カーン市長は、早ければ2018年にも、大気を最も汚染している市内を走るディーゼル車に対して、大幅な課徴金をかけると発表した

自動車メーカーは注意して事態を見守っている。2017年6月、ボルボ(Volvo)は2019年からすべての販売車に電気モーターを搭載すると発表した。しかし、大多数の車両がハイブリッドになっても、多少のガソリンは燃やしていることになる。大手自動車メーカーはすべて、今後数年のうちに完全な電気モデルの販売に向けて準備をしているようだ。そして、大衆車市場で熱狂的に期待されている、テスラの「モデル3」がついに完成して出荷が始まる

最近のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析では、電気自動車が2040年までに新車の総売上台数の半数を占める可能性が指摘されている。7月26日のガソリン・ディーゼル車販売禁止の発表で、その分析はイギリスで確かに実現するかもしれない。しかし、電気自動車の売上台数が新車の半数になるまでには、やらなければならないことがたくさんある。大規模な充電インフラの展開、需要に応えるためのエネルギー増産、本当に実用的な電気自動車のための電池やモーターといった自動車技術の進歩などだ。古い友人に背を向けるのは誰だって簡単ではないのだ。

(関連記事:Europe Is Dead Serious About Killing Off Diesel Cars,” “ボルボ、2019年から全車種を電動化 テスラはどうなる?”)

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
タグ
クレジット Photograph by Matt Cardy | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
▼Promotion
U35イノベーターと考える 研究者のキャリア戦略 vol.2
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る