6月、米国民主党全国委員会(DNC)のメールサーバーが攻撃されていたことがわかった。背後にロシアのハッカーがいたことは広く知られている。今年の大統領選挙への攻撃の結末は現時点で不明だが、ハッカーがどのように選挙に影響を与え混乱させたか、そして国の安定性とセキュリティに傷をつけたかは容易に想像できる。
米国政府はセキュリティの専門家から助言を受けるべきであり、サイバー攻撃の脅威から投票システムを防御するために介入しなければならない。科学技術者で、ハーバード大学ケネディスクールのブルース・シュナイアー講師が最近ワシントン・ポスト紙で主張したように、政府は、民主党全国委員会のハッキングを受け早急に行動するべきだ。
「外国政府が、米国の選挙に堂々と影響を与えられると知ってしまえば、将来の不正操作への扉を開くことになります。文書の盗難や廃棄なら気づけますが、不正操作になると気づけないことがあります」
国土安全保障省のジェイ・ジョンソン長官は、話を聞く気がありそうだ。3日、ジョンソン長官は選挙システムを「重要なインフラ」に位置づけることを検討していると取材に答えた。米国のいくつかの州では開票の効率化のため投票機のオンライン集計が可能で、サイバーセキュリティ保護の強化は急務だ。国土安全保障省は、重要なインフラにサイバー攻撃の脅威を含む危険を回避し、安全性を確保するよう政府の取り組みを調整する。「重要なインフラ」には、金融やエネルギー、医療を含む16の重点分野がある。
投票システムをリストに加えることは、容易ではないかもしれない。集票し、集計し結果を報告する1つのシステムがあるのではなく、9000ある選挙区それぞれに、さまざまなシステムがあるのだ。投票システムには、電子投票機もあれば、紙投票の選挙区もある。かろうじてネット投票がないのは助かる話だ。
しかし、電子的な脅威から選挙の安全を保護する専門グループ「投票の確証(Verified Voting)」によると、電子的に白紙の不在投票用紙を送付するいくつかの州では、「メールの添付、デジタルファックスまたはウェブポータルによる投票用紙の回収のために」インターネットを利用していた。
シュナイアー講師は、自身や他のセキュリティ専門家が繰り返し注意を喚起しているにもかかわらず、近年ますます多くの州が電子投票機を採用し、インターネット型の投票を「安易に実施している」州があると注意している。また、投票機メーカーは「意図的に誤魔化した、よくわからないことを垂れ流し、選挙管理人が丸め込まれている」とシュナイアー講師はいう。インターネット投票は認めるべきではなく、投票した人が確認できる紙の記録を残す電子機器を含むより安全性の高い方法に戻る(すべてをいましているわけではない)べきであると主張している。
民主党全国委員会のハッキングは、投票機だけの問題ではないことを示している。ハッカーはさまざまな異なる経路で状況を混乱させされる。シークレットサービス(米国国土安全省の下部機関で、大統領等、米連邦政府枢要部の警護を主任務にする)は、大統領候補の身の安全に加え、サイバーセキュリティを守ることに関与すべきと主張する人もいる。
国土安全保障省は、投票システムが「国の重要なインフラ」の一部になった場合、どう対処するか詳細を定めていなかった。できればすぐに詳細を定めて対処すべきだ。大統領選挙は11月だ。