中国のモバイル通信機器大手、小米科技(シャオミ)は、同社初の実質現実ゴーグルを発表し、シャオミの他の製品同様、幅広い聴衆へのアピールに備えている。
「Mi VR Play」は、画面兼コンピューターとして、4.7~5.7インチのスマートフォンを装着できる。Mi VR Play を持ち歩けるように、小型化して製造費を抑えている。ゴーグルを顔に取り付けたあと、ユーザーがどう操作するか不明だ。IDCのゲームアナリスト、ルイス・ウォードは、グーグルの15ドルの紙製ゴーグルCardboardと同じカテゴリーだとしている。Mi VR Playは、サムスンのGear VR(99ドル)や、20ドル以下で購入できるCardboardの無数の模造品とも比べられる。モバイルVRゴーグルは、ストラップ、レンズ、フレームの組み合わせに過ぎない。
世界の多くの地域で、実質現実に初めて接する機会は、それほど高価ではないモバイルゴーグルになる可能性が高い。Oculus RiftやHTC Viveといった高品質な実質現実システムは、はるかに美しい画面を持ち、より仮想世界に集中してソフトウェアを操作できるが、どちらもゲーム用コンピューターに接続する必要がある。ゴーグルに500ドル以上払い、強力なPCへの出費をためらう人には、モバイルゴーグルは代替案になる。
この単純なVRゴーグルの人気が長く持つかどうかは判断するのはまだ早い。
「懸念点は、ユーザーインターフェイスは非常に単純化されていることです。Mi VR Playは、幅広い多様なアプリが登場したとき、十分に対応できるのでしょうか。あるいは長期間の使用に耐えられるのでしょうか」(IDCのウォード)
シャオミは、中国では、スマートフォンやノートPCなどの電子機器(アップル製品に酷似することがある)を、比較的安価に販売することで知られている。2015年のシャオミの中国スマホ市場のシェアは15.2%で、中国国内企業で最高の市場占有率だ。
シャオミは、アプリ販売の競争から自社を差別化しようとしている。Mi VR アプリは現在、コンデナスト・トラベラー誌、中国のビデオウェブサイト优酷、韓国のVR企業Dooribunのコンテンツを用意しており、さらに拡充する見込みだ。アプリ内のコンテンツ販売機能はよくデザインされているが、重要なのはどんなコンテンツが利用できるか、だ。シャオミのスマホも、他のAndroidデバイス同様、ソフトウェア、センサー、ディスプレイを一体化したグーグルのVR特化型スマホテクノロジー「Daydream」(製品としては未公開)と互換性を持つはずだ。
Mi VR Playが一般消費者向けに大量販売されると考えれば、シャオミがカスタマイズオプションを用意していることも理解できる。ゴーグルは柔らかい合成繊維のカバー付きで、スマホを格納してジッパーで閉じられる。カバーの模様はケバケバしい赤の花柄、迷彩色、デニムまであり、白黒のプラスチックボディしかない競合製品より、はるかに親しみやすい。SF的なテクノロジーとはかけ離れた歓迎すべきデザインであり、家庭内の使用に合わせた製品に見える。
シャオミは、Mi VR Playの価格を発表していない。今週早くに申し込んだベータテスターはゴーグルの試用を始めるだろう。最初のテスターは、 Mi VR Playに15セント払うだけだ。
シャオミの米国内の店舗は、ヘッドフォンや大容量バッテリーといった、基本的なアクセサリーを販売するが、Mi VR Playの米国内での販売は、Google I/Oでグーグルがセットトップボックスを出す来春まで発表されない。
シャオミが、いつから米国内での販売を拡大するか明らかでない。6月、シャオミは、マイクロソフト製アプリをインストールしたデバイスを出荷する代わりにマイクロソフトから1500件の特許使用権を購入する契約に合意した。特許は、シャオミ製のVRやスマートフォン事業の米国での立ち上げの助けになる。
ただし、米国ではMi VR Playの代替品をいくらでも利用できるので、シャオミは厳しい競争に直面するだろう。シャオミに圧倒的ネームバリューがある中国より、米国企業は、米国での競争にさほど心配してはいない。とはいえ、VR業界で、早期からメディア露出が多く、それほど高くないゴーグルが登場すれば、より多くの人が初めてVRに触れることは間違いない。
IDCのウォードは、VR業界が単純なゴーグルを過去のものにして、Daydreamの登場で、グーグルでさえもが、Cardboardのようなデバイスを時代遅れにすることを期待している。
「シャオミも他社も、素早く、大衆受けする製品に切り替えるかは疑問です。この種の製品は当座しのぎなのです。2、3年もすれば、いま製造している企業は同じものは作っていません」