KADOKAWA Technology Review
×
米エネ省前長官が語った
パリ協定離脱後の米国、
東芝以後の原発
Barry Blitt
カバーストーリー Insider Online限定
Obama’s Energy Secretary Addresses Trump’s Attacks on His Legacy

米エネ省前長官が語った
パリ協定離脱後の米国、
東芝以後の原発

オバマ政権で米国エネルギー省長官を務めたアーネスト・モニツMIT名誉教授は、クリーン・エネルギーの推進や核合意の実現といった実績を残した。だが、それらはトランプ政権によって厳しく批判され、攻撃されている。モニツ名誉教授が気候変動対策の意義と、トランプ政権による政策転換の危険性、そして次世代原子力発電に関する見通しを語った。 by James Temple2017.09.29

原子核物理学分野の豊富な知識を持つアーネスト・モニツは、米国エネルギー省長官を4年近く務めていた間、政治手腕のある人物として知られるようになった。一方で合衆国建国の父のような風貌のおかげで、バラク・オバマ大統領の閣僚たちの中では最も著名な存在だった(「Moniz Nominated as Energy Secretary」参照)。

しかし、ドナルド・トランプ大統領が就任すると、モニツ長官は古巣のマサチューセッツ工科大学(MIT)に戻って名誉教授となり、L・ラファエル・レイフ学長の顧問になった。新政権の発足後数週間は、新しい政策への批判を控えていた。当時ホワイトハウスは、オバマ前大統領の気候行動計画を標的にし、気候変動を否定する人物を要職に指名し、エネルギー省の予算の大幅な削減を狙っていた。

ここ最近、モニツ名誉教授は公の場に復帰して、署名入りの新聞記事やメディアの取材記事でトランプ政権のパリ環境協定からの離脱を批判している。モニツ名誉教授は後任のリック・ペリー現エネルギー省長官が「包括的な(all of the above)」戦略を打ち出すとの話に対して、「聞いたことがある」と挑発する内容をツイッターに投稿した(編注:all of the aboveはモニツ長官時代に打ち出した、米国内の利用可能なエネルギーをすべて活用して、外国石油への依存を減らしていくエネルギー戦略)。

2017年6月、モニツ名誉教授は、非営利団体「核脅威イニシアティブ」の理事長に就任した。核脅威イニシアティブは大量破壊兵器による攻撃を未然に防ぐために世界中の武器備蓄を再調査する団体だ。モニツ名誉教授は、イランと欧米など6カ国との間での核合意を実現した交渉を仲介した経験を活かすことになった。最近になってモニツ名誉教授は、核融合スタートアップ企業のトライ・アルファ・エナジー(Tri Alpha Energy)の重役にも就任し、エネルギーの革新とそれを後押しする政策を促進する非営利組織「エネルギー・フューチャーズ・イニシアチブ」(EFI:Energy Futures Initiative)の設立に一役買った。

最近、モニツ名誉教授はMITテクノロジーレビューの取材に応じて、米国の気候変動に対するリーダーシップに与える米国政府の政策の影響、エネルギー長官時代の実績が攻撃対象にされていることへの心情、次世代原子力利用について語った。

——トランプ大統領がパリ気候協定から離脱すると決断したことを、モニツ名誉教授は相当厳しく批判されていましたね。協定から離脱することで生まれる最も重大、または直接的な危機は何だと思われますか?

まず、パリ協定からの離脱は、米国のリーダーシップに疑問符を付ける数多くの発言や行動の1つです。はっきり言って、さまざまな約束を実行する国かどうかという点で、米国の信用が揺らいでいます。各 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る