がん研究者たちは数十年にわたって、体が腫瘍を選択して破壊するよう教え込むワクチンの開発に取り組んできた。多くの臨床試験が実施されたにもかかわらず、そのようなワクチンの開発成果は無きに等しかった。だが最近のがん個別化ワクチンの2通りのアプローチが、12人の末期の皮膚がん患者のがん再発を安全に防止したようだ。
近年、科学者たちは、患者それぞれの腫瘍にある独特な一連の遺伝的特徴、すなわち突然変異に気がついた。つまり、効果的ながんワクチンを作るには、おそらくワクチンを個別化する必要がある。7月5日にネイチャー誌に掲載された2本の別々の論文で詳細が説明された臨床試験は、それが可能であることを示す初期の成果である。
うち1つの試験では、被験者ごとに個別化したがんワクチンを接種した13人の患者のうち8人が、治療を受けてから約2年間、腫瘍が見つからない状態だった。より小規模な研究では、ワクチンを接種した6人のメラノーマ(悪性黒色腫)患者のうち4人が、治療から2年以上、がんが検出されなかった。被験者となったすべての患者は、ワクチン接種前に、体内の腫瘍を外科的に摘出している。
パーカーがん免疫療法研究所のフレッド・ラムズデール研究担当副所長によると、この研究成果は、患者自身の免疫システムを使った特定のがんの識別が可能なことを示しているという。
「基本的に、がんワクチンは個々の患者の腫瘍細胞にだけあるタンパク質に対して、強力で効果的な反応の可能性を最大化します」。今回の研究には関与しなかったラムズデール副所長はこう説明する。「まるで自分だけにしか感染しない種類のインフルエンザの予防接種を受けているようなものです」。
カスタマイズしたワクチンを作るため、研究者は各患者の腫瘍から抽出したDNA配列を解析 …