KADOKAWA Technology Review
×
Volvo Is Killing Off Internal Combustion. Kind of.

ボルボ、2019年から全車種を電動化 テスラはどうなる?

ボルボが2019年から全車種に電気モーターを搭載し、2025年までに100万台の電動化自動車を販売すると発表。電気自動車専業メーカーのテスラはどう動くか。 by Jamie Condliffe2017.07.10

スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズ(Volvo Cars)は、2019年から自社の販売するすべての自動車に電気モーターを搭載すると発表した。

ガソリンのみで走る車両の販売からの脱却にこれほど大きく、また広く取り組むのは、大手自動車メーカーの中でボルボが初めてだ。「ボルボでは、2025年までに合計100万台の電動化自動車を販売する予定です」と、ボルボのホーカン・サムエルソンCEO(最高経営責任者)はフィナンシャル・タイムズ紙の記事(ペイウォール記事)で述べている。「これが私たちのやり方です」。

電動化の方針は、ボルボが2010年から中国の自動車メーカー、吉利汽車(ジーリー)の傘下になっていることが後押している。中国は現在、世界最大の電気自動車市場となっており、国内での競争も激しい。吉利汽車ではすでにエムグランド(Emgrand)などの電気自動車を作っており、同社のいくつかのテクノロジーがボルボの自動車に搭載されることが、少し前から予想されていた。

それでも、ボルボによる新たな公約は、自動車の完全な電化革命を意味するわけではない。ボルボは2021年までに新型の完全な電気自動車(電力のみを動力源とする)を発売する予定ではいるが、実際に販売する自動車の大半はハイブリッド車になりそうだ。その多くは、いわゆる「マイルド・ハイブリッド」で、エンジン・スターターとオルタネーター(一般的に用いられている12ボルトの車内電気系統を動かすためのもの)を、より強力な電気モーターと48ボルトの発電機に置き換えるというものだ。これにより、アイドリング時、ブレーキ時、惰力走行時にメイン・エンジンを止めながらも、必要な時には素早く再起動もできる。しかし、マイルド・ハイブリッド車はガソリンを燃焼させることなしに推進力は得られない。

そうは言っても、ボルボの動きは、自動車産業全体がますます内燃機関エンジンからの脱却に目を向け、なるべく早く実現したいと考えていることを示す兆候の1つだといえる。電気自動車が近未来のテクノロジーとして期待され続けて数十年が経つが、電気自動車への転換を目指す業界全体の取り組みはいっそう明確になってきている

このニュースは、テスラ(完全な電気自動車の大規模製造に取り組んでいる)に対していくつかの懸念を呼び起こすかもしれない。テスラは7月第1週に、初となる低価格帯自動車「モデル3(Model 3)」を、7月7日にも工場から出荷する予定だと発表した。だが同社は、2017年の第2四半期にバッテリーの供給数(おそらく、電気自動車産業の目下のアキレス腱となっている)が需要を満たせなかったために、予定よりも少ない台数しか自動車を販売できないことを認めている。

テスラが一般市場向け車両の製造規模を拡大するには、バッテリーに関する頭痛の種を、すぐに解消する必要があるだろう。一方で、ボルボのような企業は、電化された未来へのスムーズな移行に向け、準備を整えつつあるるように見える。

(関連記事:Financial Times, “400万円のテスラが出荷間近も、8月の生産台数はたった100台”)

人気の記事ランキング
  1. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  2. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  3. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
タグ
クレジット Image courtesy of Volvo
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る