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机や壁をスマホの画面に変える電球型ARガジェットが開発中
Bluetoothスピーカーや防犯カメラなど、電球ソケットに取り付けるガジェットが人気だが、自宅の机や冷蔵庫、壁をマルチタッチディスプレイを変えるデバイスが開発中だ。ARを使った未来のユーザーインターフェイスは実現するのか? by Rachel Metz2017.07.05
自宅にごく標準的なサイズのソケットを備えた電灯があれば、机、冷蔵庫、壁、その他さまざまな物の表面を拡張現実ディスプレイとして活用できる。「デスクトップグラフィー(Desktopography)」と名付けられたディスプレイは、スマホの画面と同じように操作できる装置だ。
デスクトップグラフィーの技術は、カーネギーメロン大学未来インターフェイス研究グループの研究者たちによるプロジェクトが基礎になっており、小型のプロジェクターと深度センサー、コンピューターを使って、机などの表面に画像を投影する。投影された画像は、同じ面に置かれた物体と干渉せずに自由に動かせる。プロジェクトを率いるロバート・シャオ博士によると、最新のデスクトップグラフィーのプロトタイプは、電球ソケットにねじ込み、電灯の電力を利用して動作する。
デスクトップグラフィーでは電卓や地図などを机の上に投影し、指で動かしたり表示位置を変えたりできる。画像が投影されている部分にコップなどの障害物を置くと、ソフトウェアが空いたスペースへ画像を素早く移動させる。投影画像は物理的な物体とリンクもできる。たとえば、テーブルの上で本を動かすと、投影されたカレンダーもそれに追従して動く。
今はまだ研究室での実験段階にとどまっているが、デスクトップグラフィーは画像の表示面にセンサーや電子機器を一切付け加えることなく、拡張現実を日常生活に持ち込む試みだとシャオ博士は語る。マイクロソフトのHoloLensや、メタのMeta 2(「未来のデスクトップがやってくる!」参照)と異なり、見た目の良い画像を生成するためにヘッドセットをつける必要はない。またポケモンGOのようなアプリとも異なり、スマホがなくてもバーチャルな画像を目の前に表示できる。
「デスクトップグラフィーは、スクリーンや装置から現実的に分離した、本当の別の世界を実現し、私たちをとりまく環境に組み込もうという試みです」とシャオ博士は語る。
デスクトップグラフィーが商業化にこぎつけるまでには、クリアしなければならない障壁がまだ数多く残っている。たとえばカメラを使ってマルチタッチを正確に読み取るのは難しい。特にカメラが手の真上にある場合、指の下の様子が確認できないため、指がいつ表面に触れたか判断するのは至難の業だ。また、すべての部品を小さな筐体に納めながら、稼働時に発生する熱をうまく逃がすのも難しい。
シャオ博士は現実的には、このプロジェクトの製品化が実現するまでには5年ほどかかるだろうと語っていた。
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クレジット | Images courtesy of the Future Interfaces Group, Carnegie Mellon University |
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- レイチェル メッツ [Rachel Metz]米国版 モバイル担当上級編集者
- MIT Technology Reviewのモバイル担当上級編集者。幅広い範囲のスタートアップを取材する一方、支局のあるサンフランシスコ周辺で手に入るガジェットのレビュー記事も執筆しています。テックイノベーションに強い関心があり、次に起きる大きなことは何か、いつも探しています。2012年の初めにMIT Technology Reviewに加わる前はAP通信でテクノロジー担当の記者を5年務め、アップル、アマゾン、eBayなどの企業を担当して、レビュー記事を執筆していました。また、フリーランス記者として、New York Times向けにテクノロジーや犯罪記事を書いていたこともあります。カリフォルニア州パロアルト育ちで、ヒューレット・パッカードやグーグルが日常の光景の一部になっていましたが、2003年まで、テック企業の取材はまったく興味がありませんでした。転機は、偶然にパロアルト合同学区の無線LANネットワークに重大なセキュリテイ上の問題があるネタを掴んだことで訪れました。生徒の心理状態をフルネームで記載した取り扱い注意情報を、Wi-Fi経由で誰でも読み取れたのです。MIT Technology Reviewの仕事が忙しくないときは、ベイエリアでサイクリングしています。