2000年前のローマの巻物、X線と画像処理で「広げず」に解読
紀元79年、ベスビオ火山によって埋められてた古代の巻物から、古代哲学や古典文学の新しい視野を人類にもたらすのは、巻物をバーチャルに広げる現代の画像解析技術だ。 by Emerging Technology from the arXiv2017.07.11
紀元79年に起きたベスビオ山の 激しい噴火は火砕流を噴出し、ローマの都市、ポンペイとエルコラーノを覆い尽くした。高温な有毒ガスがものすごいスピードで無防備な地元の人たちを襲ったこの噴火は、歴史上最も有名な噴火のひとつとなった。強烈な熱は、人々を気味の悪い静物画のようにして、都市生活の動きを止めた。その後、都市の大部分は、大量に降った灰の下に埋まった。
エルコラーノで1752年に発見された遺跡の1つは、無傷の書庫だった。この書庫には、多くの哲学書がパピルスを使った巻物として保管されており、ガダラ出身のエピクロス派の哲学者フィロデモスに関連するものも多くあった。
これは、古代から残っている唯一完全な書庫だ。発見当時、労働者たちによって多くの巻物が破壊され、その後も科学者や考古学者によって破壊されたものの、残存する約1800もの巻物のほとんどはイタリアのナポリ国立考古学博物館で保管されている。
これらの巻物に記された文章を読むことは、意義のある挑戦だ。噴火の間に、巻物は無酸素状態で加熱され、炭化し、押しつぶされ、場合によっては部分的に溶けてしまった。現存する巻物の多くは壊れやすいうえに、しっかり巻かれ、ひねられ、変形している。
多くの考古学者や科学者が巻物を広げようと試みたが、うまくいくこともあり、さほどでないこともあった。これまで研究者は約800巻の巻物を広げたが、多くは粉々に砕け、作業中に炸裂したものさえあった。保管された巻物の多くは、約2000年のもの間酸素に触れておらず、酸素にさらされたとたんに書いてある文章は急速に劣化してしまう。
そのため、近年、考古学者は、より慎重なアプローチをとり、現代の画像解析技術によって巻物をバーチャルに広げ、これまで読めなかった文章を解明しようとしている。しかしこれまでの試みでは、わずかな成功しか収めていない。
2017年7月3日、イタリアのローマにあるナノテクノロジー研究所のインナ・ブクレーエフの研究グループが …
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