
ペイパル創業者がマンモス復活プロジェクトに10万ドル投資の謎
マンモスの復活で地球温暖化を救うという、荒唐無稽なプロジェクトを描いた書籍が米国で刊行された。メディアにも大いに取り上げられた「マンモス復活プロジェクト」にはペイパルの創業者が10万ドルを投資。実際の研究は遅々として進んでおらず、論文の1本も発表されていないが、すでに映画化の準備も進んでいる。 by Antonio Regalado2017.09.01
オンラインメディア企業ゴーカー・メディア(Gawker、ギズモードやライフハッカーなどを運営していたが2016年に破綻)に対して、プロレスラーのハルク・ホーガンがゴシップ記事を巡る訴訟を起こしたとき、ペイパル(PayPal)の創業者で投資家のピーター・ティールはホーガンを金銭的に支援していた。その後、ドナルド・トランプ大統領の選挙戦の応援を始めるまでの間に、ティールはマンモスを地球に甦らせるという、あまりはっきりしない研究に10万ドルを投資していたようだ。
この話は、ベストセラー作家のベン・メズリックの新著『Woolly: The True Story of the Quest to Revive One of History’s Most Iconic Extinct Creatures(ウーリー:歴史上最も有名な絶滅動物を復活させる研究についての実話)』に書かれている。ゲノミクスの専門家、ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授が凍土の中から凍った状態で発掘されたマンモスのDNAを使って、ゾウの細胞を修正する研究過程を時系列に沿って書き綴ったものだ。
ティールが寄付をしたのは2015年あたりだが、これはメズリックが初めて明かした新情報の1つだ。この新刊本の中では、チャーチ教授と学生たちがマンモスを再生し、その群れをシベリアのツンドラ(凍土層)に開放するという無謀な計画に取り組むに至った経緯が描かれている。気候変動に立ち向かう困難な研究の一環だった。
「とにかく忘れちゃいけない。フィクションを取り除いたらサイエンス・フィクションではなくなるんだ。そうなるとこれはサイエンスなんだよ」と語る科学者がメズリックの本に登場する。
ハーバード大学のマンモス・プロジェクトが動き出したのは、2012年に首都ワシントンで「絶滅種復活」専門家の会合が開催された時期だ。 それ以来、メディアの注目度は非常に高いが、今のところ関連する科学論文は一切世に出ていない。もちろんマンモスも復活していない。
筆者は6月20日、ツイッターで遅々として進まないプロジェクトをからかった(今やハリウッドで映画化する計画が進んでいる)。すると支援者の1人、スチュアート・ブランドが私に「金を賭けて」自分とプロジェクトが成功するかどうか勝負するよう挑んできた。
「とにかく忘れちゃいけない。フィクションを取り除いたらサイエンス・フィクションではなくなるんだ。そうなるとこれはサイエンスなんだよ」
メズリックの本では「愛想のいいカマキリ」と評されているブランドは、昨今の絶滅種復活技術に対する関心の高まりに貢献している起業家であり、スポンサーだ。ブランドが運営する団体「リバイブ・アンド・リストア(復活と復元)」では絶滅したリョコウバトを復活させ、絶滅危惧種のクロアシイタチの繁殖に取り組んでいる。
ブランドによると、マンモス計画は実現性は低いかもしれないが、一般大衆の関心は …
- 人気の記事ランキング
-
- AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 【3/14開催迫る!】研究者のキャリアを考える無料イベント
- OpenAI just released GPT-4.5 and says it is its biggest and best chat model yet 限界説に挑むオープンAI、最後の非推論モデル「GPT-4.5」
- Your boss is watching 機械化する人間たち—— 「見えない目」が変える 職場の風景
- Your boss is watching 機械化する人間たち—— 「見えない目」が変える 職場の風景