ジェイソン・ニコルス博士が2011年にゼネラル・エレクトリック(GE)のグローバル・リサーチ(研究開発センター)に就職した時、化学分野での長いキャリアを予見していた。カリフォルニア大学バークレー校で有機化学の博士号取得後の研究を終えたばかりだった。しかし4年間、産業排水を処理する材料やシステムを作った後、ニコルス博士は同社の機械学習研究所に異動。2017年には、拡張現実に関する研究を開始した。化学者であり、データサイエンティストでもあるニコルス博士は、まさにハイブリッド従業員の典型といえる。そしてハイブリッド従業員こそ、人工知能(AI)を機械や産業プロセスへの導入を進めるGEの将来に欠かせない人材なのだ。
15年前、GEの機械操作員と技術者は、航空機エンジンや機関車、ガスタービンのガチャガチャ、ヒューヒューいう音を聞いたり、ゲージを確認したりして機械を監視していた。現在、GEはAIを使って同じように監視し、前もって故障まで予測している。AIテクノロジーを集結させることで、GEは2020年までに世界トップのソフトウェア・プロバイダーの一社になることを目論んでいる。2011年には、機械からセンサー・データを収集し、分析する研究にを増強するために10億ドルの戦略投資を実施した。AIを使ってより賢いモデルを作成することが、同社の戦略の次のステップだ。このモデルにより、長年のライバル企業であるシーメンスや、産業機械の分析に進出してきたIBMのようなソフトウェア巨大企業よりも優位に立とうとしている。
もちろん、1892年に創業された組織にAIを統合するのは骨の折れる仕事だ。まずは、世界中のあらゆる事業で30万人を雇用するGEを支える、技術的な頭脳を育成しなければならない。ニコルス博士が働くGEグローバル・リサーチは、機械学習について教えるオンライン・プログラムと、研究者が新しい任務を探究できる複数のシンポジウムを用意している。これまでに、約400人の従業員がデータ分析のためのGEの認定プログラムを修了し、約50人の科学者がニコルス博士が従事しているようなデジタル分析の仕事に異動した。
二重のキャリア
こうした二重のキャリアを持つ科学者の多くは、GEの機械をクラウド・ホスティングされたソフトウェア・モデルとして再現する研究に従事している。機械のソフトウェア …