2017年版
スマート・カンパニー50
選定にあたって
MITテクノロジーレビューは、革新的なテクノロジーと効果的なビジネスモデルを組み合わせた企業を「スマート・カンパニー50」として選定した。米国版ビジネス担当上級編集者のナネット バーンズが2017年版の傾向を解説する。 by Nanette Byrnes2017.08.03
MITテクノロジーレビューが選ぶ「スマート・カンパニー50」に入っているのは、どのような企業なのだろうか?
選ばれるのは必ずしも、業界最大の企業ではない(もちろん何社かはそうだが)。最も収益を上げているということですらない。特許登録の件数によるわけでもない。どこで経営されているのか、株式時価総額がどのくらい大きいのかも関係ない。
その代わり、2つの要因を考慮する。技術的リーダーシップと、ビジネス感覚である。トップ50の企業は、高いレベルのテクノロジー・イノベーションと、それを最大限に活用するビジネス・モデルを組み合わせている。国営か民営か、大企業か小企業か、一国に拠点を置くか世界中に展開するかにかかわらず、新しい機会を創造して、果敢に挑んでいる。競合企業の先を行く企業なのだ。
MITテクノロジーレビューは、人工知能(AI)が今後数年間にわたって、経済成長を推進すると考えている。トップ50の中には、AIを扱っている企業が散見される。トップ50の第1位にある企業、エヌビディア(Nvidia)はAIの専門知識を取得し、自身を変貌させた。かつてはゲームのチップメーカーとして知られていたが、今では深層学習と自律型移動手段をリードする企業だ。第3位のアマゾンは、AIを使った店舗を建設し、未来の家庭の心臓部にAIを据えるという野望により、再びランクインした。
デオキシリボ核酸(DNA)分析に焦点を当て、遺伝子療法を開発する企業も目立つ。第4位のトゥウェンティー・スリー・アンド・ミー(23andMe)、第10位のスパーク・セラピューティクス(Spark Therapeutics)、第22位のイルミナ(Illumina)、第32位のオックスフォード・ナノポア(Oxford Nanopore)などである。
2010年以来、6回にわたり注目されてきたスペースXは、2017年も第2位にランクインしている。同社は、宇宙旅行の経済学を変える可能性を秘めている。ロケット着陸を成し遂げ、宇宙船を別の着陸復行にリサイクル利用できるのが強みだ。IBMは過去7年間ずっとランクインしている。2017年はブロックチェーン、クラウドAI、量子コンピューティングにおける研究のおかげで第39位に入った。
初めてランクインした企業も多い。初登場で第6位を獲得した中国のアイフライテック(iFlytek)のような企業もある。アイフライテックは、方言、俗語、周囲の雑音などの課題を克服し、中国語と、英語、ドイツ語、ウイグル語をはじめとする他言語を正確に翻訳できる音声アシスタント・ソフトウェアを開発した。別の新顔として、第11位に入った中国のスタートアップ企業、フェイス++(Face++)の名前もある。フェイス++は斬新な顔認識テクノロジーを使って、詐欺を検知し、決済をさらに便利にするのに貢献している。
かつてのスマート・カンパニーにとって、2017年は厳しい年だった。2016年に第4位だったテスラ(Tesla)はメンテナンス問題、オートパイロット機能の課題、ソーラーシティ(SolarCity)を26億ドルで買収した後に米国最大の太陽光パネル設置企業を吸収するという難題に痛めつけられて、2017年には第31位に降下した。
知名度が高いが、最近それほどスマートではないとされた企業も何社かある。2017年には、ウーバー(Uber)もエアビーアンドビー(Airbnb)もランクインしていない。ウーバーは、商慣行、経営スタイル、テクノロジー窃取疑惑について続々と出てくる悪いニュースが合わさり、ランキングから外れた。エアービーアンドビーは、悪いニュースはなかったが、むしろ大きなテクノロジーのニュースがなかったことがトップ50の座を逃す要因となった。
全体像を見れば、MITテクノロジーレビューのデイヴィッド・ロットマン編集者がトップ50企業の紹介記事で書いているように、ここに挙げたのが、将来優勢になるであろう企業について、MITテクノロジーレビューのできる限りの推測だ。これらの企業は、これからの数年に経済を定義付けるであろうAIなどのテクノロジーにおいて有利な立場にある会社である。そうしたテクノロジーを基盤として素晴らしいビジネスを構築する可能性を強く秘めた企業なのだ。
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クレジット | Photograph by Roxana Perdue |
- ナネット バーンズ [Nanette Byrnes]米国版 ビジネス担当上級編集者
- ビジネス担当上級編集者として、テクノロジーが産業に与えるインパクトや私たちの働き方に関する記事作りを目指しています。イノベーションがどう育まれ、投資されるか、人々がテクノロジーとどう関わるか、社会的にどんな影響を与えるのか、といった領域にも関心があります。取材と記事の執筆に加えて、有能な部下やフリーライターが書いた記事や、気付きを得られて深く、重要なテーマを扱うデータ重視のコンテンツも編集します。MIT Technology Reviewへの参画し、エマージングテクノロジーの世界に飛び込む以前は、記者編集者としてビジネスウィーク誌やロイター通信、スマートマネーに所属して、役員会議室のもめ事から金融市場の崩壊まで取材していました。よい取材ネタは大歓迎です。nanette.byrnes@technologyreview.comまで知らせてください。